幼時の思い出を綴った回想記・・・
ふるさとエッセー「荷車のうた」

まえがきより――
「故郷の風景は、想像できないぐらい変わった。けれども、私の“記憶アルバム”は、半世紀以上経った今も、その昔のまま。無くなったり、壊されたりもしないのでありがたい」

人は老齢と共に故郷の原風景を魂の終の住処にする。また、過去の思い出を回想する作業は脳の活性化を促すともいわれる。
著者は国民学校2年の夏、終戦をむかえた。戦後70年の喜寿世代である。その前後の時代の追憶を村の風習などを織りこんで綴られている本書は、その意味では回想法の実践ハウツウものともいえる。

前半のエッセー「荷車のうた」編と、後半の習作「童話」編からなる。著者の育った筑波山の西南、鬼怒川のほとりでの幼時体験は、土地柄による多少の違いはあるものの、広くこの世代に通じあえる。それは、空襲、奉安殿、防空壕、千人針、学童疎開、代用教員、代用食・・・などといったこの時代特有の共通言語のせいだろうか。さらに大きな理由は、教科書が国定教科書であったことかも知れない。戦前のこの当時は、都会でも山村の分教場でも、全国津々浦々まで教科書は同じであった。

作品の前・後編を通じ、ちょうど育ち盛りの時期に食べるものは不足し、身に着けるものも貧しかった時代の題材が揃う。しかし、愚痴は言わない。代わりに、「戦争は、必ず不幸を伴う」というメッセージはきちんと言い切っている。
著者は、シニアライフアドバイザー、初級園芸福祉士。公園ボランティア活動を行っている。子供たちと昔遊びを共にしながら、見守りをし、親世代との交流も楽しむ。このプログラムに、童話や読み聞かせを取り入れるのが、これからの夢だという。

◆A5版/本文166頁/自費出版

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