天燃えて特攻の碑の影深し
忘れもしない、国民学校四年生の私は、一人で特攻機を見ていた。

――「あとがき」より

第二次世界大戦が終わり、日本が戦争を永久に放棄してから既に60余年の月日が流れました。その間、子供のときに体験した戦の強烈な印象を、私は忘れることができないままでいました。しかし、書こうとすれば悲しみの情が込み上げ、長い間かけないでいたのです。
ところが、この1、2年の間に、次々と友人に先立たれたことで、今、書かなくては時間がなくなってしまうとの思いを強くしました。
そして、たとえ戦の何万分の一、何億分の一であっても、子供の私が確かに見た戦争の悲惨さ、戦が尊い命を情け容赦なく奪っていった事実、この世を地獄と化した戦争の見聞を書くことは、私の果たすべき義務の一つではないかと思ったのです。

<中略>

戦で逝った人々を偲ぶことは、取りも直さず戦争の風化を防ぎ、平和な御代の永続を願うに他なりません。
未来永劫の平和のために、私たちはどんな困難にも立ち向かう強さを持ち、今なお世界で起こっている悲惨な戦が一刻も早く終結し、どんなことも話し合いにより解決することで各国が連繋を強め、誰もが幸せである安らかな世の実現をはかるように努めることを心から願っています。  (「あとがき」より)

◆出版社/コールサック社 ◆定価/¥1,500 (税込)