4月12日の火曜日、奇しくも古賀東小学校の入学式と同日に、平成23年度の「えんがわくらぶ」開講式が行われました。冬の厳しかった寒さのため、時期が少しずれた桜の花も十分に咲いており、その下で行われた記念写真撮影は、今年一年の始まりにふさわしく、大変すがすがしいものでした。東日本では大震災のため、未だに学校に行くことすら叶わない子どもたちが数多くいる中で、こうして入学、開講を祝うことができることに感謝するとともに、震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、一日も早い復興を心から願うものです。
  さて、開講式では、参加されたみなさん方が「子どもたちから力をもらう」「子どもと関わることで若返る」という趣旨のことをおっしゃって下さいました。子どもたちの良さを認めて下さり、子どもと関わることを喜んで下さることに、学校をまとめる立場の者として、感謝の気持ちでいっぱいになりました。確かに、子どもからは大変多くのエネルギーをもらいます。しかし、逆に子どもたちも地域のみなさんとふれ合うことで、教室での授業だけでは得られない数多くのものを受け取っているのです。その一例として開講式では空手に伝わる伝統の型の重みについてお話を差し上げました。長い経験で培われてきた技や技術、そして考え方には、一朝一夕では到達し得ない深い意味が多く込められています。核家族化が進み、おじいちゃんやおばあちゃんと共に生活することが少なくなった子どもたちは、長年培われてきた経験の重みに接する機会を奪われているといって良いのかも知れません。
  原伸介さんという30代の若い炭焼き職人さんがおられます。原さんは、中国製など安価な炭が一般的になるなかで、ひたすら師を信じ、言語に絶する苦労を積み重ねながら、あくまでも伝統の『本物指向』を貫き通した方です。
  原さんは70歳を超えた炭焼きの師との日々を通して、長い経験で培われた技術を持った職人(達人、師)の言葉には一切無駄と過ちが微塵もないこと。そういう人達は老人になっても、頭の回転が速いこと。そして格好良いことを、その著書の中で繰り返し述べられています。またスポーツを通して人一倍の体力を自負していた原さんでしたが、仕事を始めるとお年を召した職人の方々の足元にも及ばなかったことも、述べられています。そうして仕事を続けていくうちに、原さんは古くから伝わる炭焼きの技術を体得していくのですが、今の子どもたちは、原さんが体験したようなお年寄りのもつ伝統に支えられた重みに出合う機会を本当に奪われていると思います。   もちろん、子どもたちに伝統文化を伝えるなどと大上段に振りかぶって構えていただく必要はありません。ちょっとした折り紙の折り方、小刀の使い方、野菜のや花の育て方などを気楽に伝えて行かれる中で、子どもたちは、きっと経験に支えられた重さというものを自ら体感していくに違いありません。
  えんがわくらぶのみなさんは、子どもたちからエネルギーをもらい、子どもたちは、えんがわくらぶのみなさんから、経験で培われた技術や言葉の重みを感じる、そのようなお互いを高め合う地域と子どもたちの関わり、それこそが、えんがわクラブが古賀東小学校の敷地内に設置されている一番の価値だと思います。
  さあ、一年の計は4月にあり、これから1年間えんがわくらぶと子どもたちが、より豊かな交流を実現してくれることを願って止みません。