2014.11.26更新

●高齢者の15%が認知症の可能性

2013年10月、我が国の総人口は1億2751万5千人でした。その内訳は、年少人口(0〜14歳)が1639万人、生産年齢人口(15〜64歳)が7901万人、65歳以上人口が3189万8千人です。高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は過去最高の25.1%に達しています。我が国は4人に1人が65歳以上という超高齢社会に突入しているのです。

高齢化が進むことによって様々な問題が浮かび上がってきています。その最大のものは高齢者介護でしょう。高齢者の増加は要介護者の増加と比例します。PPK(ピンピンコロリ)に代表されるように、寝込まず最期を迎えたいという人が殆どでしょうが、身体能力や認知能力の低下により要介護状態になる人が多いのが現実です。平均寿命が延びれば、こうした人が増えていくというのは、ある意味当然のことではありますが、最近の研究では、従来考えられていた以上に認知症の人が多く、増加のスピードも速いことが判明しています。厚生労働省研究班(代表者・朝田隆/筑波大学教授)が全国8市町村で調査分析をおこなったところ、高齢者の15%が認知症と推計できるという結果がでました。これを高齢者人口にあてはめると462万人にものぼります(2012年度推計値)。さらに認知症になる可能性がある軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると推計しています。実に高齢者の4人に1人が、認知症あるいは認知症予備軍となる可能性があるのです。

 

●高齢者をまもる成年後見制度

2000年4月に介護保険制度と同時に施行された成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人を支援する制度です。後見人に選任された人が、被後見人をまもるためにさまざまな支援を行います。特に重要となるのが、身上監護と財産管理です。

身上監護とは生活全般を見守ることであり、被後見人が望む環境で生活できるようサポートします。例えば、被後見人にかわって介護契約を結んだり、適切な施設を探して入所契約を行ったりします。

また、収支計画を立て、被後見人の資産を管理し、生活に必要な支払いを行ったりする財産管理も大切な役割です。後見人には代理権や取り消し権が与えられているので、被後見人を不利益な契約から守ることもできます。 

つまり、持つべき後見人を持たないということは、護ってもらうべき身上監護と、守ってもらうべき財産管理が行われないということになります。行われないことによってもたらされる不利益は、悲しいことに判断能力が低下した本人が被るのです。しかもこの不利益は発覚しにくく、高齢者虐待や悪質商法のターゲットにもなりやすいのです。

しかし、後見人がいれば日常的に見守ることが可能となるので、虐待を受けることや悪質商法にだまされるリスクも減り、仮に巻き込まれたとしても早期に発見して対処することができます。

 

●成年後見制度の普及と市民後見人

我が国には成年後見制度の対象となる認知症や障害を持つ人が、推定で500万人以上いると言われています。しかし成年後見制度利用者はわずか17万6564人(※2013年12月末日時点)にすぎません。実に数百万人にのぼる人たちが、制度を利用することなく無防備な状態に置かれているのです。こうした事態を解消するためにも、成年後見制度の普及が急がれています。 では、現在どのような人たちが、後見人になっているのでしょうか?

 

 


最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況/2013年1月〜12月

 

 

2013年度では、後見人の半数近く(42.2%)が親族後見人です。しかし生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合)が上昇し、合計特殊出生率(15〜49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)が低下している現状では親族にばかり依存するのは無理があります。そこで、親族後見人以外に第三者後見人が必要となるのです。

 

 


国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2014)」より作成

 


厚生労働省 人口動態統計より作成

 

 

第三者が成年後見人等に選任されるケースは、全体の57.8%(※2013年度)で、すでに親族後見人の数を上回っています。第三者後見においては、司法書士や弁護士、社会福祉士など専門職の人が大半を占めています。

しかし、親族と専門職だけでは、すべての需要を満たすことはできません。そこで活躍が期待されているのが市民後見人です。第三者である市民に成年後見制度を学び後見人として制度の一翼を担ってもらおうというわけです。現状ではまだ数は少ないですが、地域の市民が家庭裁判所から選任され、後見人となるケースも増えつつあります。

誰もが安心して暮らせる社会を作るために、地域全体で連携し、あらゆる立場の人が制度に関わっていく必要があるのではないでしょうか。

※=最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況/2013年1月〜12月 資料10、11