資料2は、昭和15年生まれの母親が、昭和43年生まれの娘に、財産管理、任意後見、死後事務を委任した実例です。
資料を拡大して読む<PDF> |
それぞれの骨子は、資料1と同様につき割愛し、ここでは、任意後見人に対する報酬に焦点をあて解説します。
まず、財産管理委任契約における業務内容の全体像は、資料2(P18)に記載されている通り日常事務、非日常事務、身上監護事務に大別されています。
1.日常事務
@ 月1回顔を見に行く
A 不動産などの管理、保全
B 預貯金の出し入れ
C 家賃や年金の受け取り
D 公共料金や保険料の支払い
E 生活費の送金
F 保険証ほか重要書類の保管
G 郵便物の管理
H @〜Gに関すること
2. 非日常事務
@ 月2回目以降の訪問
A 定期的な収支の保全、更新等
B 貸金庫取引
C 日常的な物品の購入等
D 金融資産の変更等
E 不動産の変更等
F 各種契約の解約変更等
G 戸籍、住民票、印鑑証明などの取得
H 年金や税金関係
3. 身上監護事務
@ 在宅介護サービスに関すること
A 施設入所に関すること
B 入退院と保証人
C 通院に関すること
上記の仕事をした場合の報酬は、資料2(P19)の「報酬規程」に詳述されています。
すなわち、1.日常事務(@〜H)は月5万円の固定。2.非日常事務の@ABCDFHは1時間当たり5千円です。
2.非日常事務のE不動産に関して売買、新築、増改築、修繕、解体等をするとして、その契約金額が300万円未満なら報酬は10万円、300万円以上なら契約金額の3%となっています。
2.非日常事務のG戸籍、住民票、印鑑証明などを取得する場合、1通1千円です。
3.身上監護事務については、@在宅介護サービスに関することは10万円、A施設入所に関することは30万円、B入退院は10万円、C通院に関することは10万円で、保証人になる場合別途費用がかかるルールになっています。
財産管理委任契約の報酬規程の6に、お母さん(甲)が亡くなった場合の任意後見契約の終了に伴う事務は10万円とあります。しかし、正しくは、財産管理委任契約の終了に伴う事務です。
次に、任意後見契約に関する費用を見てみましょう。
資料2(P22)に、任意後見の報酬規程があります。
任意後見を始めるための費用として合計20万円とあります。任意後見が始まってからの月額基本給は10万円です。
3の各種手続きの内容と費用は、財産管理委任契約とほぼ同様につき割愛します。
ここで、財産管理委任契約にはない「遺産分割に関する事務」という項目がFとして記載されています。これについては2点、疑問があります。
一つ目は、遺産分割に関する事務の費用は「上記Bに準じて算出する」とありますが、上記Bを見ても算出方法が明確にならないことです。つまり、いくらになるのか不明なのです。
もう一つは、任意後見が始まる前に、例えばご主人が亡くなりその遺産分割に関する事務が発生した場合、先の財産管理委任契約では遺産分割をする権利の記載がないので(資料2、P18の委任事務目録に記載なし)、娘さんは遺産分割に関する事務をすることができないと思われます。
本件の親子は、資料2を、後見制度を得意とするという士業に数十万円払って作ってもらいました。しかし、やはり、その内容は自分でしっかり確認することが、実務上大切であることがわかるでしょう。
また、資料1と比べても、同じ「任意後見契約書」でも、事案により、内容や条件が異なることもわかります。 |