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2022.03.02 更新

任意後見を頼んだ人が、いつまでも元気でいれば、その任意後見は日の目を見ずに終わります。それはそれでとても良いことです。
ついては、頼んだ人は、認知症等にならないよう、健康で、知的で、刺激的な生活を続けることが肝要です。

また、頼まれた人も元気でいないと、いざ、任意後見人の仕事をすることになった時、役目を果たすことができませんので、自分の健康に留意しつつ、頼んだ人の様子を気にしながら、共に歳月を経ていくことになります。

一緒に住んでいるなら相手の変化に気が付くかもしれませんが、離れて暮らしている場合は、お互いのコミュニケーションの工夫が必要になります。
電話やメールも良いのですが、より頭や気を使うであろう手紙もよいかもしれません。どこか外で待ち合わせをするというのも、相手の状態を把握するのによいのではないかと思います。なぜなら、時間通りに、その場所に来ることができるか、がわかるからです。

このような実例があります。
お一人様の女性が、ある弁護士さんと、任意後見契約を結びました。
その後、3年間、その女性と弁護士さんが会うことはなく、連絡は年賀状だけ。
その女性は、
「このままでは、私が入院しても、あの人はわからない」
「私が認知症になっても、あの人はわからない」
「わからないから任意後見は始まらない」
「始まらないなら任意後見は意味がない」
と不安になってしまったようです。
ちょっとしたコミュニケーションが、継続的に必要なことがわかるでしょう。

頼んだ人が認知症になったとしても、重度でなければ任意後見を使わずに済むでしょう。また、重度の認知症になっても、お世話になっている介護事業者が「後見はいりませんよ」とか、信頼できる家族が銀行のお金をキャッシュカードで下ろせるようにしておけば、任意後見を使わなくても何とかなるでしょう。

では、どのような時に、任意後見を始めるのか。
それは、以下の3条件です。

  1. 本人が認知症になること
  2. 本人の取引先である銀行、保険会社、証券会社、不動産屋、施設、病院等が「後見を使わないと取引できない」と強く言ってきたとき
  3. 本人が任意後見を始めることをOKしたとき

1と2は必須ですが、3については認知症が進んでしまって、本人の同意がとれないことがあるかもしれません。
ただ、任意後見は本人の意向が第一優先なので、法律上も原則本人からのGoサインが求められています。
本人からのGoサインを求める背景には、費用負担の問題があります。任意後見が始まると、例えば、後見人に月3万円、監督人に月2万円、合計月5万円がかかるとします。それは、基本的に本人が亡くなるまでかかり続けます。「これだけの費用がかかっても任意後見を始めたいのかを本人に聞きましょう」という配慮が法律にも反映されているのです。

任意後見を使うタイミングは、早すぎず、遅すぎず、です。
そのためにも、任意後見を頼まれた人は、本人や取引先の様子を、さりげなく観察することが重要です。