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2022.03.27 更新

家庭裁判所は、後見を頼む人と頼まれた人への調査に加え、任意後見監督人になる人に声をかけます。監督人になるのは弁護士か司法書士がほとんどです。

家庭裁判所は、「後見監督人候補者」として提出されている名簿の中から監督人を選ぶのですが、個別に打診するというよりは、弁護士の後見担当、司法書士の後見担当に案件を照会し、監督人を出してもらうのが一般的です。

後見を頼んだ人と頼まれた人に、「どの監督人がよいか」とか、「この監督人にしようと思うがいかがですか」という打診はありません。
事前の打診があってもよさそうですが、現在の制度では、そのような手続きは義務化されていません。

監督人からしても、資料だけではなく、実際に会ってみて、
「Aさんの後見を、Bさんがすることについて、自分がチェックできそうか」とか
「このあたりが問題になりそうだから、事前にどうするのか聞いてみたいな」と
思う人もいますが、現在の制度ではそのような手続きは義務化されていないので、後見する人、後見される人、監督する人の三者面談はありません。

以上の調査(用語としては審理)が終わると、審判が出ます。

要するに、
 ・ 任意後見を始める
 ・ 監督人はこの人にする
が審判の骨子となります。

審判書は、後見を頼んだ人、頼まれた人、監督人に対し、家庭裁判所から、郵便で送られます。

この審判が出たからといって、あるいは、その審判が到着したからといって、直ちに、その後見がスタートするわけではありません。
審判に不服があれば、郵便物が到着した2週間以内であれば、即時抗告できるからです。
つまり、即時抗告がなければ、2週間後に、審判が正式に確定することになっています。

2週間以内に、不服申し立てがあれば、次の流れになります。
 ・ 家庭裁判所の資料が高等裁判所に送られる
 ・ 高等裁判所の裁判官3名が、家庭裁判所の裁判官の仕事ぶりをチェックする
 ・ 問題があれば「やり直し」、問題がなければ「そのまま」の決定が出る
 ・ 「やり直し」となると、家庭裁判所は一からやり直す
 ・ 「そのまま」となると、家庭裁判所の決定が有効になる

任意後見において不服申し立てができるのは、「任意後見を始めるのはおかしい」という場合だけで、「この人を監督人にするのはおかしい」という人事についてはクレームを出せない制度になっています。

「任意後見を始めるのはおかしい」というためには「判断能力が十分にある(から後見はまだいらない)」という診断書を医師からもらうなどして、後見を頼んだ本人が元気なことを証明する必要があります。

なお、任意後見を始めるよう家庭裁判所に求めた人は、不服申し立てはできません。
「自分でお願いしておいて、何を言っているの?」ということになるからです。

不服申し立ての大半は、後見を頼んだ人や頼まれた人以外の人が、任意後見開始を家庭裁判所に求めた場合です。すなわち、頼んだ人の親族が「後見を始めるべき」と家庭裁判所に手続きを取ったときに起きるようです。背景には、人間関係やお金のトラブルがあると思って、ほぼ間違いないでしょう。