2022.03.31 更新

介護保険制度に「要介護度」があるように、法定後見にも3つの類型があり、それぞれ「後見」、「保佐」、「補助」と名付けられています。
ここでは、本人の判断能力が欠如している状態が最も重いとされる「後見」について説明します。

民法7条では、後見は次のように定義されています。
「精神上の障害により、事理を弁識する能力を、欠く常況にある者」

“精神上の障害”とは、認知症、統合失調症、などを指します。

“事理を弁識する能力”とは、判断能力と考えてよいでしょう。より具体的には、お金が絡むことについて損得勘定ができるか、ともいえます。入浴や食事をどうするか、というような生活行為に対する判断能力ではないと思ってください。

具体的に考えてみましょう。

老人ホームへ入ったことで自宅を売却するにあたり、自宅の評価額が3000万円なら3000万円で売ることに同意すべきですが、「2000万円で売ってもいいよ」と言ってしまうようだと、「損得勘定ができない=事理を弁識する能力がない」ということになります。また、保険に入った方が得か保険を解約した方が得か、株を今処分した方が得か今は売り時ではないか、などがわかるかどうかであるとも言えます。

“欠く常況”とは、常にその能力が欠けている状況です。
“状況”ではなく“常況”であることを見逃してはいけません。
つまり、損得に関することが、いつも、何もわからないと後見類型にされるのです。
逆に、この銀行取引のことだけは今でもわかるとか、老人ホームの費用を見て「高くて無理」と的を射て言えるようであれば、わかることがあるのだから後見類型にはなりません。

大は小を兼ねるとか、いずれは全てわからなくなるでしょうということで、当初から何でもかんでも「後見」にしてしまう人がいますが、これは明らかな間違いです。それでは「いずれは『要介護5』になるから、みんな『要介護5』でいい」と同じことになってしまい現状を評価したことにはなりません。

後見類型となると、保佐類型や補助類型に比べ、「遺言を書くときに医師2名の同席が必要となる。すなわち、医師2名が立ち会って、『今の状態での遺言は有効である』と言わない限り、遺言が書けなくなる」という法律があります。

そもそも、いつも何もわからないのだから遺言は書けないだろうと思うでしょうが、本人が生きている間の取引に比べ、亡くなってからの遺産の分配は、本人に影響がないと考えられており、後見類型の人でも、医師の承認があれば有効な遺言が書けるようになっています。
「今の遺言は大丈夫」と医師に言ってもらえるぐらい、誰に何をいくら残すかについてしっかりいえる被後見人は、高齢者の場合は少なくありません。しかし、実際に、それに協力してくれる2名の医師を探すのは困難です。

因みに、現在の成年後見制度の利用実績を見ると、軽い補助や保佐ではなく、一番重い後見になってから制度を利用する人がほとんどです。軽いうちに始めた方がよいのか、いよいよ後見しかなくなってから利用した方がよいのかについては、議論が分かれるところです。