2023.01.23 更新

本人が重度の認知症で、家族や親族がなく、成年後見制度を使わないと、銀行からお金を下ろせない、老人ホームに入れないといったケースがあるとします。

このような場合、本人の生活や福祉のために、やむなく、本人が住んでいる市町村が、家庭裁判所に後見人(保佐人、補助人)の申し立てができることになっています。

本来ならば、後見を始めてほしいと家庭裁判所に言うべきは、本人・配偶者・親族であり、自治体は最後の最後ということになります。

下表は、家庭裁判所に後見等を始めるよう申し立てた人の推移です。

親族による申し立てが年々低下し、本人や市町村長申し立てが増えていることがわかります。

 
 最高裁判所家庭局資料より作成

親族による申し立てが減っているのは、家族が後見人になれないから、後見人となった弁護士等の報酬が高いから、などの理由が多いようです。

これまで、家族が後見のスイッチを押すことで、国全体の後見の量が維持されてきましたが、その家族が成年後見制度を使わないとなると、制度が破綻しかねません。

だからといって、認知症等になった本人が「自分に後見人をつけてください」と家庭裁判所に言うケースが堅調に増えるのもおかしな話ではないでしょうか。そもそも、後見人がつくということがどのようなことで、それが自分に必要不可欠であると認識し、家庭裁判所に必要な書類を用意して提出することができるのならば、そもそも後見は要らないのではないでしょうか。

要するに、「本人が申し立てたように見せかけた申し立て」、が急増しているのが現実なのです。では、誰が、そのようなことを支援しているのか?それは自治体です。


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さて、資料20は、令和3年度の、市区町村長申し立ての都道府県別データ(出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概況」)です。

「うちの住民である○○さんに後見人をつけてほしい」という申し立てが一番多いのは福島県で、県内の申し立て全体の46.5%が市町村長による申し立てとなっています。福島県には、身寄りがなく、かつ、重度の障害を持ち、成年後見制度が必要な人が、他県に比して多いのでしょうか。福祉の統計を見てもそのような傾向はみられませんでした。

「うちの住民である○○さんに後見人をつけてほしい」という申し立てが最も低いのは、北海道の旭川エリアで、10.2%です。46.5%の福島県と実に4.5倍の格差があるのです。

どうして、福島県は市長申し立てにそれほど積極的なのでしょうか。そして、北海道の旭川エリアは消極的なのでしょうか。

一般的に、市区町村長申し立てに積極的な自治体には、後見を生業にしている専門職後見人が多く、消極的な自治体には、専門職後見人が少ないと言われています。後見される住民ニーズより後見を業とする供給側の都合で、市長申し立ての量が決まっているのが実情と言えるでしょう。あなたの町は、後見の市長申し立てに積極的ですか?消極的ですか?