成年後見制度を使うことになった事情を説明するのが、「申立事情説明書」です。その実物は、資料21の通りです。資料の上から順に、書き方のポイントを解説します。
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本人の状況は、大きく6つの項目で構成されています。
1は、本人は今どこにいるか、入院や施設へ入る予定があるかについてを記入します。家族なら難なく書けるでしょう。
2は、本人の来し方についてです。どのように育ち、学び、働いてきたかについてなので、これも難なく書けるでしょう。
3は、本人の病歴です。同居していればわかるでしょうが、離れて暮らしているとわからないかもしれません。わかる範囲で書けばよく、わからない場合は書かなくても大丈夫です。
4は、高齢者であれば要介護度を書き、障害者であればその程度を表す区分などを書きます。
5の(1)から(5)は、日々の生活についてです。体はどの程度動くか、コミュニケーションは取れるか、理解力はあるか、記憶力はあるか等についてをチェックします。人との関りや外出状況についても同様にチェックします。
(6)の金銭管理については、他に比して重要な項目です。本人が自ら管理している、または、親族などの支援を受けて本人が管理しているのであれば、成年後見制度は必要ないでしょう。
よくあるのが、「兄が勝手に管理してけしからん」など、子供たちが親の財布を取りあっている場合です。「親族又は第三者が管理している」のところをチェックすると、家庭裁判所は「お金のことで揉めているケース」と判断し、家族を後見人に選ばないでしょう。つまり、成年後見制度を使えば自分が親の財産を管理できると思って申し立てることで、見ず知らずの他人が親の財布を管理することになってしまうのです。
後半は、成年後見制度の利用が必要である事情を家庭裁判所に伝える部分となります。
1にある任意後見契約の存在を調べるには、法務局で、任意後見登記の交付を求めるとわかります。任意後見がなければ、そのような契約はないということで「ないこと証明」が交付され、あれば、任意後見の登記が交付されます。
2の「本人には,今回の手続をすることを知らせていますか。」は最も重要な項目です。「申立てをすることを説明しており,知っている。」か「申立てをすることを説明したが,理解できていない。」のいずれかにチェックが入るのならばよいのですが、「申立てをすることを説明しておらず,知らない。」にチェックが入るのは、本人不在の申し立てということで不適切といえます。
世が世なら、本人が知らない間に禁治産者にされてしまうのです。本人に必ず伝え、意思を確認することが極めて肝要です。
3の推定相続人の意見は、愚問と言わざるを得ません。本人が成年後見制度を使うべきかどうかは、周囲の意見に影響を受けるべきではないからです。ここで反対の人がいると、見ず知らずの弁護士等が後見人になることが多いようです。
認知症になった親のお金をめぐる問題等で、家族内の話し合いではどうにもならないような場合、成年後見制度を使うのも一案ではあります。しかし、そのお金の使われ方について、当の本人がどう思っているかが重要であり、その意思を無下にするための後見の使い方は制度の誤用と言えるでしょう。
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