被後見人となる人の財産が、どこに、いくらあるかを、家庭裁判所に伝えるために用意されているのが「財産目録」です。自分や家族の財産を国に開示することに抵抗がある、親の財産の詳細まで把握していないから書きようがないなど、成年後見制度の利用者にとって、抵抗や負担が多い資料と言えます。
被後見人やその家族が感じる抵抗や負担と同じくらい、「財産目録」は、家庭裁判所が、誰を後見人にするかを決めるにあたり、重要な資料といえます。というのも、財産の多寡によって、多い順に弁護士、司法書士、行政書士や社会福祉士が後見人に選ばれるのが実際の運用だからです。
一般的に、ここに記載された財産目録の預貯金の額が500万円以上であれば、家族が後見人になりたいと事前に伝えていても、家庭裁判所は、弁護士等を後見人に選任してくると言われています。要するに、職業後見人に対する報酬支払い能力があるか否かを、家庭裁判所は財産目録を通じて見ているのです。
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資料22を見ると、財産は大きく9つに分類されています。すなわち、預貯金・現金、株などの有価証券、生命保険や損害保険、不動産の土地の部分、不動産の建物の部分、誰かに貸しているお金などの債権、その他として自動車や絵画など、借金などの負債、そして、本人がもらえる予定の相続財産です。
いずれも、しっかり書こうとすると大変な作業になるでしょう。自分の財産ならまだしも、家族といえども、どこに何があるかなど、わからないことが少なくないからです。銀行、保険会社、証券会社に聞いても簡単には教えてくれません。「ご本人以外には教えられません。知りたければ後見人になってからまたご連絡ください」という金融機関もあります。家族に知られたくない財産を持っている人もいるでしょうし、金融機関は家族ではなく本人と契約し取引しているのだから、それはそれで仕方のないことかもしれません。
つまり、後見を始める時の財産目録は、わかっている範囲で書く以外にないのです。離れて住んで久しい老親の財産を調べるために、何十万円も払って弁護士に財産目録を作成してもらう必要はありません。というのも、この財産目録は、実際に後見が始まってから1か月以内に、後見人になった人が調べあげ、家庭裁判所に提出することになっているからです。
後見が始まってから、初めて本人の財産の全容が明らかになるということや、本人の財産の全体を把握するために成年後見制度を使うということも実際にあるので、後見のスタート前にすべてがわかるわけがないのです。
9番目の遺産分割未了の相続財産(本人が相続人となっている遺産)などは「わからないから書けない」「決まっていないから書けない」の最たるものでしょう。このタイミングで、それを書いて出せという方がおかしいという意見もあります。皆様はどのように思われますか。
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