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2023.01.30 更新

「相続財産目録」は、後見人が付く予定の人、つまり、被後見人になろうとする人がこれからもらう遺産の目録です。つまり、本人から見て、亡くなった親族の財産目録を家庭裁判所に出すことになります。

「相続財産目録」は、ここ数年に新しく用意された資料で、それまではこのような情報の提供は求められませんでした。
生きている人が後見を使うにあたり、どうして亡くなった人の財産まで開示する必要があるのだろうかと思うでしょう。それは、相続財産が、誰を後見人にするかという人選と、その後見人がいくらもらえるかという後見報酬に、かなりの影響を与えるからといえます。

遺産をもらったらほとんどの場合、被後見人の財産は増えます。だから、後見を開始する時点で本人の財産が少なくても、「相続財産目録」に記載された内容をみて、後見が始まってから本人の財産が増える見込みがあるならば、最初から職業後見人をつけておこうと家庭裁判所は考えるようです。

職業後見人の多くは、不動産よりも動産、動産の中でも預貯金を重視する傾向があります。背景には、預貯金額に応じて後見人の報酬が上がるという家庭裁判所内の運用があります。不動産、保険、株は処分しないと現金化できず、現金化できないと後見人がもらう報酬が増えないので敬遠されます。だから、どんな遺産があるのかを詳細に知るために、「相続財産目録」が新しく設置されたのです。
特に、夫を亡くした妻が認知症である場合や、障害を持つ子の親が亡くなった場合、本人が持っている財産より、相続でもらう財産の方が多いことはしばしばあり、相続財産目録が重要な資料となるのです。


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資料23の中身を見てみましょう。相続財産は大きく8つのカテゴリーに分かれています。それぞれ、預貯金・現金、株などの有価証券、被後見人が受取人になっている生命保険や損害保険、不動産の土地の部分、不動産の建物部分、亡くなった人が回収できる債券、その他として自動車・絵画・宝石・壺・古銭・切手・高級ワイン等の経済的価値があるモノ、亡くなった人がこしらえた借金などの負債、の8つです。

これらの情報が、具体的かつ網羅的に書いてあれば、その案件の後見人になるかという打診を家庭裁判所から受けた職業後見人は、遺産分割をどのように進めていくかをイメージすることができます。そして、遺産分割協議で一回報酬を得て、遺産相続で増える預金金額と本人の余命から、最終的に得る報酬の算段ができるというわけです。

本来であれば、後見される人が、どこで、誰とどのような暮らしをするのが良いのか、そのためにいくらかかるのか、今あるお金と収入で足りるのか、足りない場合は家族が援助するのか、持ち家を売るのか、絵画を売るのか、などの資金繰りを考えることが大切です。しかし、家庭裁判所はそれを聴かずに、どこに、いくらあるのかを詳述させるのです。
成年後見制度は、認知症等があっても本人が本人の財産を利活用して、人生を謳歌し、生活を円滑に回していく支援策です。しかし、経済的に値踏みをされている実情に違和感を覚えるのは、私だけでしょうか。