家庭裁判所に提出する「後見人等候補者事情説明書」(資料26)では、5で、「後見人の候補者となった経緯や事情」を記載することになっています。家族や知人をノミネートする場合、配偶者だから、息子だから、娘だから、古くからの友人だからなどになるでしょう。弁護士等をノミネートする場合、自治体に紹介されたから、本人の家族から依頼を受けたからなどになるでしょう。
6では、後見人になったら、本人の財産をどのように管理するのか、本人の医療や介護をどのように選んでいくかなどについて記載します。「本人の財産管理と身上保護(療養看護)に関する今後の方針,計画」とあるように、最も重要といえるでしょう。ところが用紙には、以下の3項目が用意されているだけです。
□ 現状を維持する。(本人の財産状況,身上保護状況が変化する見込みはない。)
□ 以下のとおり,財産状況が変化する見込みである。
(大きな収支の変動,多額の入金の予定など,具体的な内容を記載してください。)
□ 以下のとおり,身上保護(療養看護)の状況が変化する見込みである。
(必要となる医療や福祉サービス,身の回りの世話など,具体的な内容を記載してください。)
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「財産目録」や「相続財産目録」や候補者プロフィールに比べ、なんともざっくりとした聞き方という印象を受ける人が多いようです。いずれにせよ、近い未来に向かっての予定や構想をしっかり書くことが重要です。
介護におけるケアプランをなぞって、私はこれを「後見プラン」と名付け、後見人等候補者にその書き方の支援をしたり、研究をしています。皆さんも、この6については、別紙として1〜2枚の分量で、どこで、誰と、このような生活をするために、お金はどれくらいかかるかなどを、場合によっては表にするなどして、家庭裁判所に提出するようにしましょう。「家族だから、自分が被後見人のことを一番理解している。だから、自分が後見人になるのがふさわしい」と思っていても、自らアピールしないとその内実は家庭裁判所には伝わりません。その内容から「さすが家族だな」と家庭裁判所に思ってもらうのが、家族や心当たりの人がその方の後見人になるための最善の方策だと思います。
7では、家庭裁判所が選んだ後見人に対しダメだとは言えないよ、ということがメインなので、最後の「選任については不服申し立てができない」だけを設けるか、備考としてその旨を書いておくだけで十分なはずです。しかし、「家族なのになんで後見人に選ばれなかったの?」とか「なんで監督人が付くの?」という後の苦情を跳ね返すために、わざわざその旨を示す項目が用意されています。
8で気になるのは、(2)のイ「本人の財産を本人以外の者のために利用しないこと」です。この記載は制度の趣旨と多少異なるように思われます。後見人は、被後見人が自らの財産を使いたいように使うのをサポートするのが仕事です。だから、例えば、被後見人が孫の学費に充ててほしいといったり、そのような約束が過去にあったのであれば、被後見人の生活に支障をきたさない範囲で、被後見人の財産から孫の学費を払うのが後見人の役割と責任になるからです。
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