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2023.02.27 更新

成年後見制度の立法担当者であった法務省の元審議官 小池信行氏は、「家族が、家族の後見人になるのが大前提」といっています。成年後見制度は、前身となる禁治産制度において配偶者や長男が後見人になる原則を踏まえつつ、親族以外の他人も、そして法人も後見人になり得るように改訂されました。
2000年では親族以外の後見人は1割弱で、後見人の9割が親族でしたが、その後、親族後見人が徐々に減少し弁護士等の後見人が増加、2012年を境にその割合は逆転しました。現在は親族後見人が2割、弁護士等の第三者後見人が8割となっています。

 

最高裁判所家庭局資料より作成

 

立法担当者が想定した大原則がどうして崩れたのか?その原因を特定することはできませんが、考えられる要因は少なくとも5つあります。

一つ目は、親のお金をめぐる親族間のトラブルです。「成年後見は相続の前哨戦」といわれることがあるほどに、親族間での老親のお金をめぐる争いが増えているので、法的に紛争問題を処理することに長けている弁護士を後見人にしようという考えです。

二つ目は、ロースクールの進展に伴い、弁護士等の数が増えたものの、仕事の数がさほど増えていないので、後見の仕事をその人たちに担ってもらおうという考えです。仕事がない弁護士についてはメディアで紹介されることもあり、それなりに切実な問題と言えます。

三つ目は、家庭裁判所による監理業務がままならないので、法律に詳しいとされる弁護士や司法書士を、いわば家庭裁判所の代わりに活用しようという考えです。家庭裁判所の人手不足の問題も多少あるようなので、有力な説と言えるでしょう。

四つ目は、親族後見人による使い込みや横領事件を未然に抑えるためという考え方です。しかし、後見の仕事に誠実に取り組んでいる親族が多いので、親族=横領と決めつけ、親族の代わりに弁護士等を選ぶのは少し乱暴なのではないでしょうか。

五つ目は、そもそも家族がいない人が増えているからです。結婚をしない、結婚をしても子どもがいない、などの世帯は確かに増えています。

後見の世界で有名な条文があります。民法858条で、「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」です。要するに、「後見される人を気遣って後見活動をしなさい」ということですが、この条文は禁治産時代にはありませんでした。このような法律がなくても、家族だったら、本人の気持ちを汲み取り、配慮すると考えられていたからです。

民法858条は、親族以外の人が後見人になる場合の注意喚起であるとも言われています。海外と比べて、家族以外の人がこれほど多く後見人になっているのは珍しいと言われています。家族だから良いというわけではありませんが、あなたなら、見ず知らずの弁護士さんを後見人に選んで欲しいですか、家族や親族を後見人に選んで欲しいですか?