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2023.03.02 更新

「後見制度支援信託」とは、被後見人の預貯金を信託銀行に預ける金融商品です。この金融商品は、後見人に被後見人の預貯金を持たせておくと使い込むから、被後見人の預貯金が多い場合、後見人からその預貯金を取り上げて信託銀行に管理させようという発想で誕生しました。要するに、家庭裁判所は、本人の財産を管理する後見人を自分で決めておきながら、その後見人を信用しないで、信託銀行を担ぎ出し、後見制度支援信託という特殊な金融商品を作らせ、後見人にその商品を買わせています。

後見制度支援信託は金融商品ですから、当然手数料がかかります。この手数料は被後見人の財産から支払われます。家庭裁判所が、キチンとした後見人を選び、かつ、その後見人の業務を適切に監督していれば、このような信託商品は必要ないし、被後見人の財産から無駄なコストも引かれなくて済むので、後見業界では後見制度支援信託に対して批判的な意見が多いようです。

この信託商品ができたおかげで、これまでに数兆円という預貯金が信託銀行に流れ込んでいます。信託銀行はそれを自らの活動資金にすることができ、家庭裁判所は管理監督でラクができるのです。
後見制度支援信託により、「うちの大口顧客の預貯金が信託銀行に取られてしまう」と立ち上がったのが信用金庫です。「後見制度支援信託」に対抗して、「後見制度支援預金」という金融商品を開発し販売しています。しかしこれも理屈は同じで、被後見人の財産が減るばかりで、認知症や知的・精神障害の方の財産を監理するための後見制度の中に、さらに管理制度があるというのが実状です。

現在、後見人、後見監督人、後見制度支援信託、後見制度支援預金などのコストで、被後見人の財産の約1%が毎年目減りしています。そこまでして後見人、後見監督人、信託銀行、信用金庫などに自分の財産を預けたいひとがいるのか、甚だ疑問です。

後見制度支援信託や後見制度支援預金に預けたお金を使う場合、後見人は家庭裁判所に、「これこれにいくら必要だから、信託銀行や信用金庫に預けているお金のうち、いくらを下ろしたいのですが良いですか?」というお伺いを立てます。それに対し家庭裁判所が「良し」としたら、信託銀行等に対し家庭裁判所が「お金を出しなさい」という指図をします。信託銀行等は、家庭裁判所が許可した金額を後見人に渡し、また、その財産に蓋をします。もちろん、このやり取りにも手数料が発生し、その費用は被後見人負担です。

なお、後見制度支援信託と後見制度支援預金は、いわゆる後見類型と未成年後見にのみ適用され、保佐類型と補助類型はその対象外となっています。ある程度の判断能力がある人の財産に国は介入しません。