右コントローラから音声案内を聞くことができます
 
2023.03.19 更新

資料を拡大して読む<PDF>

資料31は、都内在住の保佐の方の登記事項証明書です。

「事件の表示」という部分に平成12年とあります。これは、保佐を始めてほしいという申し立てが家庭裁判所に出されたタイミングを指します。その下にある「裁判の確定日」が平成14年4月9日ですから、この案件については、保佐を始めるかどうか、誰を保佐人にするか、 その保佐人にどのような権利を付与するか、などについて、短くとも1年4か月以上かかったことがわかります。

このケースの主役である被保佐人は昭和17年生まれです。
保佐人は1名で、権利関係を見ると、平成14年と平成19年に、「代理権付与の裁判確定日」と「代理権の範囲」の記載があります。別紙目録からそれぞれの内容を見てみましょう。

平成14年の代理行為目録には8項目あります。
1はビルの賃貸借に関すること、2は金融機関との金銭消費貸借と抵当権に関すること、3は地代に関すること、4は会社の株主権に関すること、5は不動産の管理に関すること、6は個人事業における雇用契約に関すること、7は税務申告に関すること、となっており、8は1から7までの事柄について弁護士や税理士に頼むこと、です。

実は、この被保佐人は社長さんです。持ちビルを建て直すにあたり銀行からお金を借りていましたが、突如脳に障害が発生してしまいました。ついては、成年後見制度の保佐を使って、会社のこと、ビルのこと、銀行とのやり取りを保佐人にやってもらおうということになったのです。

平成14年から数年を経て、会社の業務のめどが立ったようで、平成14年の代理行為目録に追加される形で、今度はより個人的な業務を遂行してもらうために、平成19年、17項目の代理行為が追加されます。

その1は、本人が持っている不動産を売ったり、不動産をもとにお金を借りたり、不動産を貸したり、不動産の管理を委託することです。2は、本人のお金で他人の不動産を買うこと、3は、自宅を建てたり直すこと、という具合に個人的とはいえ不動産に関する内容になっています。

4は、銀行からお金を下ろしたり、口座を作ったり、口座を解約すること、5は、保険に入ったり、保険の内容を変更したり、保険を解約すること、6は保険金を請求したり保険金を受け取ること、という具合に、銀行や保険会社との取引に関する内容です。ここで、株や証券に関する記載がないので、この方は、株式投資等はしていないように思えます。

7は定期的な収入、8は定期的な支出、9は本人の借金の返済についてです。
10・11・12は介護関係、13は医療関係、14は税金関係、15は登記関係、16は、1から15までの仕事に関連する費用の支払いとなっています。

このケースのように、まずは、大きな仕事に関する保佐を始め、その後、日常的なことに関する内容を追加することもできる、ということを知っておくのも良いでしょう。