後見人には、身上配慮義務、善管注意義務、報告義務の三つが課されます。
まずは、最も大切な「身上配慮義務」についてご説明します。後見人、保佐人、補助人は、程度の差こそあれ、判断能力が十分ではない人に代わって、銀行取引などが出来ます。逆に言えば、本人がしそうにないことを、代わりにできてしまう立場にあるとも言えます。
そこで、本人の意思を尊重して仕事をすることを義務付ける条文が2000年に制定されました。民法858条、タイトルは「成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮」、中身は、「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」です。
民法858条が制定されたのは、家族以外の人も後見人等になれるようになったという背景があります。
家族であれば、本人のことはある程度わかっています。認知症や障害を持ったからと言って、本人を無下に扱うこともないでしょう。しかし、家族以外の人が後見人等になると、本人の性格、価値観、お金の使い方といったことをよく知らない場合が多く、本人に確認しようにも、本人の判断能力や意思能力が不十分なのです。そのような状況で、後見人等になった場合、本人がしそうにないことをしたり、するであろうことをしないことが予想されるので、後見人等になったら、本人の意思を尊重しなければならない、本人の身上に配慮せよ、という身上配慮義務が法律に明記されたのです。
「善管注意義務」は、善良なる管理者としての注意義務のことです。具体的には、被後見人等の通帳やハンコをなくさない、施設に入って自宅が空き家になった場合、自宅のメンテナンスを怠らないなどということです。つまり、自分のモノ以上に、他人様のモノを丁寧に扱わなければならないという義務です。
「報告義務」は、業務報告です。後見人として、何をどのようにやったか、その結果、本人の財産はどのように変化したかなどについて、家庭裁判所に年1回程度、レポートを提出することになっています。レポートを提出するタイミングは、被後見人等の誕生日月や、後見が始まった日付など、ケースバイケースですが、定例の報告が義務付けられます。加えて、財産や健康や生活面で大きな変化があった場合は、その都度、臨時でレポートを提出することになります。
成年後見制度を利用している人の声で多いのが、「家庭裁判所にだけ報告すればよいというのはおかしい。後見される本人やその家族にも報告すべきではないか」という視点です。これについては、家庭裁判所に加え、本人や家族に報告する後見人もいますし、そのような義務は法律上ないから、仮に求められても一切しないという後見人もいます。「本人に報告しても理解できないでしょ」とか「家族であっても財産は個人のものだから守秘義務があるので言えません」という後見人等もいます。皆様は、この点、どうするのが良いと思いますか?
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