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2023.03.23 更新

不動産の処分について解説します。
成年後見制度では、不動産は二つに大別されます。すなわち、住むための不動産とそれ以外です。

住むための不動産を「居住用不動産」と言います。その居住用不動産を売ったり買ったり、貸したり借りたり、あげたりもらったり、直したり、不動産を担保にお金を借りたりする場合、事前に、家庭裁判所に許可を取らなければならないことになっています。家庭裁判所の許可なく、取引をした場合、それは無効となります。


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資料36は、家庭裁判所が用意している「居住用不動産処分許可申立書」です。申し立てるのは、後見人・保佐人・補助人で、年間1万件弱が、この手続きを経て処分されています。

資料36の2枚目に申し立ての理由として

  1. 親族に引取り扶養されることとなったので,居住用不動産が不要になった。
  2. 施設に入所することとなったので,居住用不動産が不要になった。
  3. 施設入所資金の捻出のために,処分が必要になった。
  4. 医療費,生活費等の捻出のために,処分が必要になった。
  5. 建物が老朽化し,維持していると経費がかさむ。

という項目が挙げられています。

これらの理由をもとに、申立ての趣旨として、

「申立人が本人の居住用『(1)建物 (2)敷地 (3)建物及び敷地 (4)区分所有建物』につき、『ア 別紙売買契約書(案)、イ 別紙賃貸借契約書(案)、ウ 別紙(根)抵当権設定契約書(案)、エ その他』のとおり、『a 売却、b 賃貸、c 賃貸借を解除、d (根)抵当権を設定、e その他』することを許可する旨の審判を求める」

となっています。

つまり、本人が住むための不動産を売ったり、貸したり、その他をする必要性を述べ、買ってくれる、借りてくれる人との契約書の案を提示し、家庭裁判所に許可を求めることになります。

この申し立てを受け、家庭裁判所は、それが被後見人のためになるのか等を考慮し、「そのようにしてよい」という許可を出すか、「その取引をしてはいけない」と許可を出さないかの、いずれかの審判を下します。実績として9割以上の確率で許可が出ています。
逆にいえば、1割弱の確率で、家庭裁判所は許可を出さないのですが、それは、

@ 被後見人等が不動産に手を付けたくないと希望している
A 不動産を売って現金を得なくても、被後見人等の生活が回るほどの経済状況である
B 後見人等が提案してきた売買や賃貸等の金額が相場より低い

という3点のいずれかに該当する場合です。

住むための家は、本人にとって大事な空間なので、後見人等と言えども、別途、事前の許可が必要なのですが、居住用不動産以外の不動産に位置づけられる別荘、収益用のアパート、田畑、などは、家庭裁判所の許可なく、後見人等は、それらを売ったり、貸すことができるとされています。ただし、相場に比べて著しく低い金額での取引をすることは、本人に対して経済的損害を発生させることになるので、好ましい取引とは言えず、後に問題になることも珍しくありません。