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2023.03.25 更新

後見人は、判断能力が不十分な人に代わって、お金や権利が絡むことの多くをできますが、以下にあげる5項目は、後見人といえども守備範囲外となっています。

1.結婚、離婚、養子縁組について

後見人、保佐人、補助人が、被後見人、被保佐人、被補助人に代わって、誰かと結婚や離婚をするとか、誰かと養子縁組みしたり、養子縁組を解消する、と言ったり、代理人としてそれらの手続きを役所に提出しても、それは無効です。このような、被後見人等の身分に関する行為は、後見人等の業務外になっているからです。
ただ、被後見人等が成年後見制度を使う前や、また、使っている最中にした結婚や養子縁組を無効であると裁判を起こす弁護士の後見人等はいます。その裁判資料を見ると、被後見人等である夫が妻を訴えたり、被後見人等である親が養子を訴える形になっていて奇妙に映ります。そして、多くの場合、「なんでそんなことをするの?」と、後見人等によって原告とされた被後見人等が怒ることが大半です。

2.医療行為を受けることについて

医療行為を受けるかどうかについての権限も、後見人等にはありません。したがって、担当医師から「手術をしますか?」と聞かれても、後見人等は「それに答える立場にはありません」と言わざるを得ないのが現状です。
海外の後見人等には医療同意権があるとされており、日本の後見制度は遅れていると言われます。家族が後見人等であれば、この点は解消されます。後見人等としてではなく、家族として意見を述べることで、手術をするかしないかが決まるという実情があるからです。
介護施設や病院から、「職業後見人が『コロナのワクチンは効かないから本人に打つな』と言ってきたが、施設としては打ってもらわないと困る。どうしたらよいか」という相談を受けたこともあります。そのようなことをいう権利がないことを知らない後見人は少なくないかもしれません。

3.働くことについて

認知症があっても軽度であれば働く人もいます。経済的かつ精神的、社会的にお金をもらって働き続けたいという人もいるでしょう。しかし、後見人等が、被後見人等に代わって、雇用契約を結ぶことは認められていません。実際に汗して働くのは被後見人等であり、働かない後見人等が、雇用する側と、労働条件等について交渉するのはおかしいという考えがあるからです。仮に、後見人等が、被後見人等が獲得する賃金のために、苛烈な労働条件に応じてしまったら、実際に働く被後見人等はたまったものじゃないでしょう。
かといって、被後見人等になったら働けないとか、雇われなくなると言うことではありません。被後見人等が自ら契約し、必要に応じて、後見人等が雇用契約等に同意することで、働くことができます。

成年後見制度を使ったために解雇されたというニュースを耳にしたことがあるかもしれません。しかし、それは、禁治産・準禁治産時代の名残です。以前、禁治産者(今でいう被後見人)や準禁治産者(今でいう被保佐人)は、「働く能力が無いだろうから解雇してよい」とか「働くことはできない」といった立場になっていたのですが、そのような考え方や法律は、憲法違反として、裁判で会社側が負けています。