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2023.03.28 更新

シニアライフ、いわゆる「定年退職後の生活をどのように送るのが幸せなのか」というテーマについては、様々な意見や考えがあります。

例えば「ピンピンコロリ」。これは、要介護等にならず、亡くなる直前まで元気でピンピンして、コロリと天国に行くのが良いという発想です。専門的には、「要介護期間を短く、健康寿命を長く」ということになります。また、ことわざで言えば、「老いては子に従え」とか「60の手習い」といったものもあります。
「ジェロントロジー」という学問をご存じでしょうか?年を取ることの意味や価値を多角的に探究する学問として、ヨーロッパで誕生しました。その後アメリカで発展し、近年は、世界最長寿国の日本でも知られるようになってきました。

そのジェロントロジーには、シニアライフに関して3つの理論ないし定説があります。それぞれ、離脱理論・活動理論・継続理論です。

「離脱理論」とは、老後はおとなしくするのが本人のためにも、社会のためにもなるという考え方です。これは、年とともに体力が衰えてくると現代社会のスピード感についていけないので、喧騒から離れて、趣味で農業をやったり、日向ぼっこをしながらお茶を飲んだり、いわゆる楽隠居的な生活をするのが本人にとっても社会にとっても良いという考え方です。いわゆる、定年退職制度や運転免許証の返納制度などは、この「離脱理論」に基づく具体例として挙げられます。

「活動理論」は、これからは自由、さあ、やってみたかったことをいろいろやってみよう、という考え方です。60歳を過ぎれば、社会的ならびに家庭内の義務の多くを果たしたと言えるでしょう。これからは自分のために生きる、時間とお金を自分のために使う、と考え、旅行へ出かけたり、資格を取ってみたり、様々なことにチャレンジしてシニアライフを謳歌しようという考え方です。現役時代は立場上しづらかったということで、定年退職後に、オートバイに乗り出すシニアもいますし、起業する方などもいます。こういった方々は、この活動理論に基づく具体例と言えるでしょう。

被後見人が、老後を離脱理論的に過ごしたいのか、活動理論的に過ごしたいのかを、後見人はある程度見極めながら仕事をすると、上手くいくかもしれません。

3つ目の理論は「継続理論」です。これは、人の生活スタイルや考え方は40歳以降あまり変わらないから、年をとっても、それまで通りの生き方を継続することが、本人のため、家族のため、地域のためになるという考え方です。

継続理論をベースに高齢者、特に若年性認知症等の後見を考えると、被後見人がしてきたことを、なるべく続けられるよう手配するのが、被後見人にとっても後見人にとっても良いということになります。認知症になったからといってやめてしまうのではなく、本人が中年時代からしてきたことを、頻度を減らすなどの工夫をしながら、なるべく続けられるようにするのが「高齢者にとって良い後見」と言えるでしょう。そのために、主役となる被後見人は、認知症になっても「これはこうしたい」などをメモに残しておくとよいでしょう。