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2023.03.30 更新

80代の方から、「息子が知的障害者です。私が亡くなった後、成年後見制度を使わないといけないのでしょうか」という相談がありました。これが、いわゆる「親亡きあと問題」です。

令和3年時点で、知的障害者は約110万人、精神障害者は約420万人、あわせて530万人です。判断能力が不十分という意味では、認知症高齢者のみならず、知的・精神障害者も成年後見制度の対象となります。実際、成年後見制度を使っている方の6割は認知症高齢者ですが、4割は知的障害者や精神障害者で、その親御さんは、自分の後見より子供の後見に関心があります。

親御さんの多くは、障害を持つ子に「お金をどのくらい残したらよいか」とたずねてきます。この点は、「認知症になった親のお金をどうするか」とたずねてくる、お子さんたちからの相談と大きな違いがあります。

障害者の子どもを持つ親御さんからの相談に対し、まず伺うことは、お子さんの状態です。その際、障害者手帳が何級か、ということは後見の観点からは重要ではありません。手帳の等級は福祉サービスに関係するもので、後見とは必ずしも関係しないからです。

私が重要視しているのは、「お金のことは、お母さんにやってもらうということでよいですか?」とお子さんに聞いたとき、「うん」とか「はい」と言えるか。あるいは、「首を縦に振ることができるか」ということです。これができれば、障害があっても任意後見ができる可能性が極めて高くなるからです。「えっ?でもうちの子、障害者手帳1級ですよ」と親御さんがいっても、「それは福祉の話。後見とは関係ありませんから、等級が重くても心配ありません」というと、多くの親御さんが安心した表情をされます。

障害者の親御さんが高齢の場合、兄弟姉妹がいれば、障害のある本人が、兄弟姉妹にお金のことを頼むという任意後見契約を提案しています。そして、多くの場合、公証人との面談に私も同席し、契約締結までサポートします。すると、「これで安心」「うちの子の能力を引き出してくれてありがとう」と御礼を言われます。

兄弟姉妹がいない場合、施設が後見や障害年金の管理等を引き受けてくれるかを聞いてみるとよいでしょう。最近では、生活のすべてに関わっているのだから、金銭管理や後見についてもやってみようという施設が増えてきました。他方、「施設が後見までするのは守備範囲が広すぎる」とか「施設との契約については、利益相反になるからやらない方がよい」という意見もあります。そこで、施設の運営主体とは別に、後見や障害年金を管理するためだけの法人を立ち上げ、生活支援は施設で、金銭管理はこちらの法人で、という具合に、障害を持つ人をトータルでサポートしようとするところもあります。

「そこまで施設を信じて大丈夫なの?」という声もあります。これについては、後見であれば、家庭裁判所が監督するから大丈夫でしょう。なかには、家庭裁判所とは別に、自分たちで、第三者によるチェック機能を具備することで、丸抱えにならない透明性を保つ工夫をする障害者の事業所もあります。興味がある方は、お子さんの施設に「後見もやってくれますか?」と聞いてみるとよいでしょう。