成年後見制度利用促進基本計画の課題の4つ目は、後見人や後見監督人の報酬を適切な金額にすることです。例えば、被後見人の預貯金が4000万円くらいあると、後見人の報酬は年間48万円程度と言われています。これを10年続けると、後見人に、480万円払うことになります。
後見監督人の報酬は後見人の半分程度と言われています。仮に、後見人に月4万円、後見監督人に月2万円かかるとすると、合計で年間72万円、10年間で720万円かかることになります。
家族が後見人になる場合、報酬を取ることはほとんどありません。家族がいるのに見ず知らずの弁護士や司法書士が後見人や後見監督人になり、総額数百万円のコストがかかるのは高すぎると、成年後見制度の利用者の多くから不満が出ています。家庭裁判所が金額を決めること、何をしたからいくらという基準が公表されていないことも、不透明さを助長しています。
これらの費用の支払いを拒めば、後見人や後見監督人が、被後見人や家族を相手に裁判を起こしてくるのが一般的です。裁判となると弁護士に依頼する手間と費用も掛かります。後見する人にとっても、後見される人にとっても、重要事項である報酬が、明朗になるのか、そして、納得のいく金額になるのか、最大の関心事と言えます。
5つ目は、後見に関する保険です。現状では、後見人が加入する保険は販売されています。後見人が、被後見人の家に行く途中で事故に遭ったとか、被後見人の家の花瓶を割ってしまったとか、被後見人の預貯金通帳やハンコを無くしてしまったとか、被後見人に対し心無い発言をしてしまい不快な気持ちにさせてしまった場合などに、一定の金額が支払われる賠償責任保険です。
しかし、家族が後見人の場合、この保険に加入することはできません。家族といえども、後見人となればその仕事は業務となり、弁護士等の後見人と、権利や義務に何ら変わりはありません。後見人の賠償責任保険の対象が親族後見人にまで拡大していくか、注目されます。
また、あってもよいのに無いのが、後見される側が加入する保険です。認知症になると保険金が給付される認知症保険のように、被後見人になることで保険金が給付される後見保険があっても良いという発想です。
令和4年4月から、「後見制度と家族の会」という任意の非営利団体が、後見される人が加入できる保険的な仕組みをスタートします。後見制度と家族の会は、家族に後見人がついている方や家族の後見人をしている方が集う全国組織です。後見制度を実際に使っている人たちならではの発想で展開される保険的な仕組みに注目が集まります。
この仕組みの特徴は、認知症でも、知的障害でも、保険に加入できることです。また、後見が始まった時に保険金を受け取る人を、自分や家族にしても良いし、後見人になってくれる予定の個人やNPO法人にしても良く、後見人にはならないけれど本人の世話をしてくれる社会福祉法人などにしても良い点です。「後見」をキーワードに、被後見人を中心とした関係者をつなげていく仕組みとして、その動向が注目されます。
以上の5点は、厚生労働省のホームページ等で公表されている「第二期成年後見制度利用促進基本計画」に掲載されています。ご興味ある方は、ご覧になってください。
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