船内ではいたるところでさまざまなエンターテイメントが用意されている。メインレストランのあるフロアには劇場があり、毎日いろんなショーが上演されている。ブロードウエイでの有名なミュージカルショーが上演される日もある。映画館も毎日違ったプログラムが上映されているし、バーやクラブでは生のバンドが演奏していて、ダンスフロアではダンスをカップルが楽しんでいる。関西から参加したという初老の夫妻は毎日のように着飾ってダンスを楽しんでいた。聞けば、定年後夫婦でダンス教室に通って、ダンスを楽しむためにクルーズに参加しているとの事。船上のデッキではディスコダンスも実施されていて、全く踊れなくてもプロのダンサーがステップを教えてくれるので気楽に参加できる。

船内デッキでのディスコパーティ
デッキでくつろぐ奥山夫妻

カジノは日本では許可されていないのであまり馴染みが無いが、ルーレット、カードゲーム、スロットマシンなどラスベガスに負けない種類がある。現金でも楽しむことが出来るし、1日の上限は決まっているが、船内カードでお金を借りることもできる。この場合は下船のときにクレジットカードで決済される。スロットマシンで遊んでみたが、わずかな時間で数十ドルを持って行かれてしまった。

船内には、他にさまざまな施設がある。デッキにはプールがあり、日中は多くの人たちが水着姿でプールサイドのチェアに寝そべって本を読んだり、日光浴をしたりしている。最上階は船内を一周しているデッキがあり、ジョギングやウオーキングをしている人も多い。スポーツジムにはさまざまなエクササイズマシンが揃っていて、海を見ながらひと汗かくのもまた楽しい。スパやサウナバスもあって、スポーツの後、汗を流すのが気持ちいい。図書室には最新の人気小説や美術全集などのグラフ誌も揃っていて、落ち着いた雰囲気で読書が楽しめる。貸し出しもしている。

乗客には各個人用のメールアドレスが用意されていて、パソコンルームからメールの受発信やインターネットを楽しむことが出来る。但し、日本語対応をしていないので、ローマ字か英文での受発信となる。カジノがあるフロアにはショッピングモールがあり、デューティフリーでのショッピングが楽しめる。日によってはアクセサリーなどのバーゲンセールも催される。美容院もあり、フォーマルウエアを着る日には女性陣はヘアセットやメイクアップに利用している。また、画廊もあり、オークションが開催される日もある。これらの情報はすべて船内新聞にその日の催し物情報として紹介されるので、気をつけてチェックしておかねばならない。

パナマ運河通過
パナマ運河の水門

パナマ運河を通過する船の誘導車そばから通過船を見学

2週間の航海中に船は数箇所の港に寄港する。大体朝7時から8時くらいに港に到着して、夕方6〜8時くらいの間に出港する。この間にさまざまなオプションツアーが用意されている。参加したオプションツアーで特に印象的だったのが、メキシコのプエルトバラータという所で参加した乗馬と、パナマ運河を渡ってすぐの寄港地でアルバという小さな島国での潜水艇での海底遊覧である。

乗馬は、馬場で馬の乗り方の説明を受けた後、外に出て川原に向かい、川の浅瀬を上流に向かって3時間ほどトレッキングをするもので、良く飼いならされた馬が1メートルくらいの川の深みのところでもちゃんと運んでくれる。また、休憩地では希望者に騎手の後に乗って川の深みを首までつかって走る体験もさせてくれる。
潜水艇での海底遊覧は、沖に停泊している潜水艇までボートで向かい、乗船するとハッチを閉めて潜水を始める。幸いに操作する船長のそばに座ることが出来たので、潜水艇の操作を見ながら海底の景色を楽しむことが出来た。海底には小さな魚群や色鮮やかな魚たちのほかに、難破した船の残骸を見ることが出来た。BGMにはビートルズのイエローサブマリンが流れ、いかにもという感じではあったが、貴重な体験をすることが出来た。またボートで戻った岸壁にはイグアナがうろうろしていて異国のムードが漂う。

今回のツアーの目玉はやはりパナマ運河の通過である。パナマ運河は、太平洋と大西洋を結ぶ全長80kmの運河で、内陸部の運河と海との高低差が95mあるために、太平洋側の2箇所に3つの水門、大西洋側の1箇所に3つの水門がある。太平洋側から水門に船が入ると門が閉ざされて海水が注入され1つの水門で約30m水位が上昇する。給水が終わると次の水門が開き、その水門に船が入ると門が閉ざされて再び給水が始まる。都合3つの水門で95mの高低差をクリアしている。

水門は全巾33.53m、全長304.8mのため、通過できる船のサイズが最大で全巾32.3m、全長294.1mまでとなっている。従って、91,000tのインフィニティは全幅32m、全長293mでこの水門を通過することが出来るぎりぎりのサイズということになる。
水門を通過するときには、陸上で作業をしている作業員と手が届くくらいのわずかな間隔しかない。船を正確に水門に導くために両岸にレールに乗った誘導車がワイヤーで船を牽引していく。この光景をほとんどの乗客たちがデッキに乗り出して写真を撮ったりビデオを回したりして、固唾を呑んで見守っている。また、パナマでのオプションツアーでは陸上から船の通過を見守ることが出来る。

原住民の部落でのショー(パナマ) 砂漠を駆けるオフロードツアー(アルバ)

航海中の半分は終日運行のため船内で過ごすことになるが、全く退屈しない。日中もさまざまなイベントが催されているので、それらを見るのもよし、プールサイドでのんびり日光浴をするもいい。クルーたちは如何にお客様を楽しませるかということに常に気を使ってくれている。

下船の前々日には最後のミュージックショーとフェアウエルパーティが催される。そしてこの日には、各部屋に世話になったクルーたちへ渡すチップの袋が配布される。滞在期間中キャビンスチュワードやウエイター達にいちいちチップを手渡す必要は無く、このときにまとめて用意すればよい。大体基準が決まっていて、世話になる担当者に対して1日当たり1ドルくらいが相場となっているので、乗船期間を乗じた金子を用意する。クレジットカードでの決済も出来るので、船内にいる間はほとんど現金を使うことが無い。また寄航する国々でも米ドルが使用できるので、国ごとに両替する必要も無い。

シアターでのステージショー フェアウエルパーティ
フェアウエルパーティでの料理の飾りつけ

この日開催されるミュージックショーには、船長のお別れの挨拶と主だったクルーたちがステージ上に上がり、挨拶をした後にショーが始まる。フェアウエルパーティは夕食後、夜の11時半から開催される。この日は最後のフォーマルウエア着用の日のため、食後も着飾ったままの格好で参加することになる。会場はメインレストランで開催されるので、クルーたちはセカンドシッティングのディナーが終了する10時近くからわずかな時間で模様替えをする。パーティ会場には氷の彫刻を中心に、綺麗に盛り付けられた料理が並ぶ。ドリンクサービスもこの日は無料で提供される。

家内の世話をしてくれたインド人ウエイターとアシスタント

12月23日、いよいよ最終航海の日には下船の準備が始まる。部屋のロッカーにしまってある荷物をバゲージに詰め込み、夜までに部屋の外の廊下に出しておかなければならないから。
寄港地ごとに購入した土産類で結構荷物が増えてしまっているので、荷物の詰め込み作業に時間を要する。そして翌朝の下船日には、パッケージツアーのグループや直接飛行場へ行くグループ、個人でホテル宿泊するグループなどに区分けされて下船の順番を待つ。我々は日本の旅行代理店を通さないで直接クルーズの代理店と契約したため、マイアミのホテルを予約して2日間過ごす事にしていたので、バゲージをピックアップして通関を済ませ、タクシーを拾いホテルへと向かった。

2週間の船旅は瞬く間に終わってしまった。「一度クルーズに参加すると、必ず嵌まるよ」と経験者から聞かされていたが、ご多分に漏れず、私たちも友人夫妻もすっかり嵌まってしまい、船内で案内された今年の9月に実施される地中海クルーズの予約をしてしまった。
家内とも体の動くうちに出来るだけいろんな処に行ってみようと言っているので、クルーズ旅行も今後10年間の行動スケジュールの中で、大きなウエートを占め始めてきている。