「年々歳々季同じからず」
今年の夏は、春早々から始まった感じで、全くもって「旬」の異変が続いています。
この夏も、近年気候だけでなく人間生活の中味までが、大きく変遷してきています。
■昔の夏…汗びっしょり、浴衣、うちわ、せんす、蚊帳、昼寝、井戸冷水
■今の夏…夏休暇、アウトドアー、冷房病、冷蔵庫、クーラー
このように、同じ夏でも情緒的から物理的な夏へ、言い換えると「人間中心の夏」から「モノ中心の夏」へ瞬く間に人間は順応させられてしまいました。その結果、個人の機能が強調されて利益社会が形づくられ、血縁・地縁が蔑ろにされるようになりました。やがては、高い生産性を挙げる人々が大切にされ、食物の旬や味を失くし、飽食時代へと走ってしまったのです。今年の夏こそ、季節感たっぷりの“旬”といえる“人間”としての夏を味わってみてはいかがでしょうか。


夏は早朝から気温の上昇が急激で、時によっては熱帯夜も珍しくなく、人間の心も体も必然的に動作の緩慢、挑戦意欲の稀薄化、感動性の著しい低下を招きます。このため、行動範囲が小さくなり、運動不足、暑さや仕事・おつき合いのストレスの蓄積、冷房による体調不良、食欲などの意欲の減退などが生じ易くなります。
そこで、最近注目されて一般化されつつある技術に「セラピー効果」というものがあり、この夏こそ是非とり入れたいものです。即ち、遊びやレクリエーションの持つ「楽しさ」・「やすらぎ」・「リラックス」・「休息」といった要素が、人間という生体や心を活性化させ、表情を明るくし、ひいては積極性や自発性という意欲を引き出し、生活の仕方そのものを変革するという不思議な力をもつことをよく知られています。
深い緑と濃い空気に恵まれた山に登り眺める、白砂青松の青い海と地平線まで望める広々とした海での泳ぎ・魚釣り、音楽会や絵画の展示など芸術観の親しみ、夏植物のミニものづくり、フラワーのアレンジ等自分のやりたいことに集中することも一つのセラピー法なのです。
要は、気だるい一日々を活性化させるために、夏でなくては出来ない自分づくりで気分をすっきりさせ、高揚させ、心身共にリフレッシュさせることです。そうすれば顔つきまで柔らかくなり、笑みがこぼれ、心が落ちつき、人間関係もよくなり、若々しいニシアになれるのです。
暑い夏の快適セラピーは、ムダな経費をかけないで自分自身の少しの努力でできることです。


日本人はケジメをつけにくい国民性を持っています。いわんや暑い夏ともなれば、なかなか「シャキッと」というわけにはいかないのが普通でしょう。
想い出してみましょう。新入社員時代、新婚生活時代、式典に出席した時などの緊張感・新鮮性・感動性・「ホッと一息」はどうだったでしょう。しばしば惰性に陥り、暑さにかまけてついダラダラとなり易い夏こそ「ケジメ」が欲しいものです。特に、●時間のケジメ●人間関係のケジメ●おしゃれのケジメ●日常生活のケジメ●行動のケジメなどは注意したいものです。
なかでも、言葉の使い方で「暑い」ということを一言も今夏は言わないというのはいかがでしょう。


人間生活の長い歴史の中で、それぞれ一人一人はこの世に生を受けて以来、ある決まった生活ルールを築いてきました。例えば、食事時間や質・量、睡眠、起床、行動、趣味などです。夏はこの習慣が乱れ易く、健康に変調を来すことが多いのが当たり前です。食事が減ったり飛んだり、麺類ばかりになったり、水分が多くなったり、いつもより疲れがひどく夜もぐっすりと眠れないなどの症状が出て来ます。
そこで夏の食事は●楽しくとる●リズム感をもってとる●バランスの食を心がける●地域産物をできるだけとる●個性に合った食にする●決まった時間にとる●水分は多めにとることが肝心です。
また、自身の肉体管理も大切です。早寝早起・早朝とか夜間の散歩・なるべく真昼の出歩きをさける・外出時は必ず帽子をつける・できるだけ昼寝をしたい・転ばないように運動靴をはきたいものです。
何れにしても、加齢と共にあまり新しいルールを作ったり、若者に乗じないが賢明な方法なのです。


夏になると職場では特別休暇もあることでしょう。ここで一つ、自分一人のために「私的夏休暇」をとりたいものです。よく家族・子供のためとかに使われている夏休暇こそ、自分自身のために使ってこそ自身の成長や心のゆとり、果ては健康づくりにも役立つことになるのです。
具体的には、自身をいつもは経験しない非日常の環境においてみたいものです。例えば、一人で深山に入る・四国八十八ヶ所の一部を何年かの計画で歩いてみる・外国を旅してみる・座禅に没入してみる・何十冊かの読書に挑戦するなどの一生涯にとっての想い出をつくりたい夏にしたいものです。
四季の歌ではないが、夏こそ「好奇心」・「ときめき」・「強さ」・「想い出」のあるものにしたいものです。そのためには、夏バテを背負わない健康づくりこそがことが唯一の条件なのです。