シニア(Senior)とは、一般的には年長者・先輩・先住者・上官などといった意味ですが、私たち財団では『先輩格世代の人々』としてこの意味を捉えています。サラリーマンでいえば定年で第一線を退いた人々、個人営業者でいえば権限や仕事の多くを次代に譲った人々、主婦でいえば子育てを終わった人々などがそうです。いずれも第一の人生で相応の知識と経験を蓄え、第二の人生で自由な自分の時間を十分に持てるようになった人々であり、今までの経験を活かして生きがいのある新しい人生を歩もうとしている人、また歩んでいる人々です。
したがって、しばしば耳にする高齢者(シルバー)や老齢層(オールド)とは違った概念です。もちろんシニア層の中には高齢者は多いのですが、老齢や高齢がシニアの意味を拘束するものではありません。
平成の時代、すでにシニア層の時代に入っています。1990年(平成2年)、55歳以上の人口は約3,000万人で全人口の24%を占めています。1955年(昭和30年)には12%程度(約1,000万人)でしたから、急に膨張してきたことが分かります。そしてあと数年後の2010年(平成22年)にはなんと4,600万人を超え、全人口の36%以上にもなると推計されています。<表1参照>
このような状況になれば消費市場にも大きく影響してきますし、選挙人口(20歳以上)の45%をも占めるため、政治をも左右する大集団となります。
シニア層の意識、活動などが将来の日本経済のカギを握っているといっても良いでしょう。
表1 : シニア人口の推移 <万人>
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1955年 |
1970年 |
1990年 |
2010年 |
総人口 |
8,928 |
(100) |
10,372 |
(100) |
12,361 |
(100) |
12,762 |
(100) |
55歳以上 |
1,045 |
11.7% |
1,548 |
15.0% |
2,930 |
23.7% |
4,661 |
36.5% |
うち65歳以上 |
475 |
5.3% |
733 |
7.0% |
1,490 |
11.8% |
2,813 |
22.0% |
男性人口 |
4,386 |
(100) |
5,092 |
(100) |
6,069 |
(100) |
6,227 |
(100) |
55歳以上 |
486 |
11.0% |
702 |
13.7% |
1,300 |
21.4% |
2,101 |
32.8% |
うち65歳以上 |
203 |
4.6% |
322 |
6.3% |
599 |
9.9% |
1,194 |
19.2% |
女性人口 |
4,541 |
(100) |
5,280 |
(100) |
6,292 |
(100) |
6,535 |
(100) |
55歳以上 |
558 |
12.3% |
845 |
16.1% |
1,635 |
26.0% |
2,561 |
39.2% |
うち65歳以上 |
271 |
6.0% |
410 |
7.7% |
891 |
14.2% |
1,619 |
24.8% |
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2010年
: 厚生省推計 (平成9年1月) |
ルネサンス(Renaissance)とは、ご存知のように14〜17世紀のヨーロッパで起こった芸術・文化・学問の復活復興であり、その運動を指します。
私たちは、『シニア層の人々が、第一の人生で蓄えてきた豊富な知識・経験を闊然と復活復興させ、あるいは新しいものを取り込んで再生してゆくこと。』としてこの言葉を考えています。
自分自身の第二の人生を豊かにするばかりではなく、できれば人のため世のためにも大いに活用していきたい。──人が人のために働くボランティア活動を想定してみて下さい──ルネサンスという言葉にはこんな願いが込められているのです。
“シニア ルネサンス”とは、『シニアの人々がイキイキと生きがいを持って第二の人生を歩み続けるためにそれまでの知識経験を再生すること』ですが、他のシニアの人々の知識経験をも取り入れてゆけば、第二の人生はもっともっと明るく拡がっていくことでしょう。
人口の半数近くを占めるようになるこの層の人々が、この事に気づき行動すれば社会全体に大きな活力を呼び起こすに違いありません。個々人のルネサンスを越えて社会の活力を活かすという意味では、これはまさに『シニア
ルネサンス運動』と呼べるでしょう。
最近では“シニア”と銘打った活動や運動が盛んに行われています。これは大変心強いことで、私たちはこのような他の機関とも連携してシニア
ルネサンス運動を活性化し、その輪を拡げていきたいと考えています。
シニア層の多くは概ね健康で、経済的にも困難が少ないといえます。しかし強健な体力の保持は難しく、健康を維持するにも年相応の努力が必要です。働き口が狭くなったり、労働時間も少なくなったりして労働報酬が減収、または不定にあることも無視できません。限られた年金だけでは不十分で、まして思わぬ支出が必要な場合にはどうしたらよいか、など具体的な経済面での悩みが増えてきます。シニア期に入る前に老後の住宅の手当がしていない人々には悲惨なケースも見られますし、核家族や少人数家族の増加が経済的にも非経済的にも生活に影響しています。知人や友人、近隣との交流が少なくなった生活環境もシニアの心を痛めています。
こうした環境の中で最も心配されるのは、生きがいの喪失です。生きがいは人それぞれの感性や価値観によって異なるにしても、やはり家族をはじめ知人や友人、社会との交流の中で生まれるものです。この『生きがい』という大きなテーマは、実は老人対策よりももっとやっかいで深刻な問題であるという認識も必要でしょう。
人生80年時代の今、定年退職後、あるいは子育てが終了してしまった後に約20年以上もの人生があることになります。そしてこの長さは種々の不安を募らせます。
そんな不安のトップには、『寝たきりや痴呆症になるかもしれない』というもので、全体の約半数を占めています。これに続くものとして、『配偶者に先立たれたり孤独になってしまう』という不安で、これが概ね45%です。続いて『経済問題』で、約30%を占めています。これら3つがシニア生活不安の御三家です。
では、この御三家を含めたシニア生活のいろいろな不安を取り除くにはどうすればよいのでしょうか。「将来が不安だから」、「どうも自信がないから」、というだけでは国や地方公共団体の社会福祉政策は動いてはくれません。健康保険などによる予防対策も定期的なもので、人々の多種多様なニーズには十分対応できないものです。したがってシニアの人々が自らの不安を取り除くためには、まずは自分で自分なりの対処法を見つけて自発的に努力することから始めなければなりません。そして今、シニアの誰もがこのことに気づき、何かを始めようとしています。
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