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SRコラム

成年後見トラブル実話/訴えられた司法書士後見人

2025.03.31 更新

司法書士を紹介したケアマネの反省――

アメリカ在住のPさんからメールが届きました。母親の成年後見人(以下「後見人」といいます)についてシェアしたい、知らない間に母に後見人をつけられて酷い目に遭ったとのこと。
事の始まりは叔母さん(母の妹)の相続です。

Pさんの両親とその叔母は、同じマンションで別々の部屋に住んでいたのですが、叔母は孤独死してしまいました。叔母の相続人はPさんの母親だけで、遺産額は6千万円。母親は、自分のケアマネジャーに紹介された司法書士に、妹の部屋の掃除の手配と相続手続きを依頼しました。司法書士は母親と業務委託の契約書を交わし、2か月ほどでそれらの業務は完了しました。

しかし、司法書士は母親に遺産が渡る段になるや、Pさんの父親に「奥さんには後見人をつけないと遺産は渡せない。ついては、自分を奥さんの後見人にする手続きを取ってください」と言い、父親は言われるがまま裁判所に書類を出し、その司法書士が母親の後見人になりました。ただ、その司法書士、2か月前には後見人がいなくても母親と契約をして仕事をもらっているのです。それが、いざ遺産を渡す段になって「後見人をつけないと渡せない」とはどういう理屈でしょう。この2か月の間に母親の判断能力が急激に低下した事実はないのですから、疑いがあれば契約の時点で後見人をつけるように言うべきか、後見人をつけるまでもなく遺産を渡すか、いずれかしかあり得ません。

このように、理屈に合わないトークを弄して言いくるめ、一人の高齢者から2回、3回と仕事を取ろうとする司法書士や弁護士は、残念ながらいるようです。

さて、司法書士の次なるターゲットはPさんの父親でした。母親に後見人をつける手続きをさせておきながら、今度は手続きをした父親の判断能力が不十分だと、またも理屈に合わないことを言い出して、自分が保佐人になろうとしたのです。しかし結局、父親に保佐人がつくことはありませんでした。
Pさんが久しぶりに両親に電話したところ繋がらないので、心配になって民生委員をしている幼なじみに事情を話して調べてもらったところ、以上の経緯とともに、いま両親は同じ施設に入っていることがわかったのでした。

Pさんがアメリカから司法書士に電話をすると、司法書士は迷惑そうに「日本に来てもコロナで両親には会えないし、二人とも元気だから帰国しなくていい」と言いました。確認のため施設や病院に連絡すると、「面会はできる。ただ、一時危篤になって、あと2か月もつかどうか」と司法書士とは真逆のことを言われました。
急いで帰国して司法書士事務所を訪ねると、開口一番「コロナの症状は出なかったんですか?」と帰国者に対する差別的な言葉を投げかけられました。嘘をついたうえに失礼な態度をとられ、悪い印象しかありません。

実家のマンションは、両親が施設に入所して空き家になっていました。Pさんは帰国中、マンションで過ごすつもりだったので、司法書士に部屋の鍵を求めると「渡せません。あなたが勝手にマンションを売る可能性がある」と言いがかりをつけられ拒否されました。話にならないので実家近くのホテルに1か月滞在することにしましたが、無駄な費用と余計なストレスがかさむこととなってしまいました。

ところで、叔母さんのお骨はどこにあるのかと尋ねると「マンションの部屋にある」とのこと。亡くなってから2年が経っており、今となっては誰もいない部屋にお骨が置きっ放しになっていることは良くないからと、Pさんは司法書士を伴って部屋に入りました。
ところがお骨がありません。「どういうこと?」と聞くと「どこにあるかわからない。マンションにあると思ったからそう言った」と言ってバツ悪そうにそそくさと部屋を出て行きました。
結局お骨は、2年間、葬儀場に保管されていたことがわかりました。Pさんがお寺に連絡をして納骨しましたが、住職から「その司法書士は無責任すぎる。なんとかしなさい」と大変なお叱り受けてしまいました。

その後も、司法書士の数々の愚行が判明します。母親が施設に入るとき、司法書士はタクシーの手配をしただけで、独りで行かせていました。叔母さんの部屋を片付けた業者から受け取ったはずの発見物リストを求めると、失くしたのか隠したいのか「ない」の一点張り。病院の事務員によると、支払いがたびたび滞り、電話をすると直ぐに切ろうとするなど「珍しく対応の悪い後見人」とのことです。施設の職員によると、母親を訪ねて来たのは1回だけで、父親から「帰れ」と怒られ、そそくさと帰っていました。

しかもあろうことか、自宅にあったはずの現金1,300万円が消えていることも判明。司法書士に尋ねると「870万円が入ったカバンは寝室のクローゼットにあった」と言いましたが、そのとき部屋に一緒に入った別の二人は「お金が入っていたカバンはダイニングルームのテーブルの上にあった」と証言し、言い分が嚙み合わず、怪しい限りです。

そののち、母親が亡くなって後見は終了しましたが、Pさんは、もと後見人だった司法書士を被告に裁判を起こしました。地元で幅を利かせているという司法書士だっただけに、紹介したケアマネジャーも「そんな人だとは知らなかった。もう誰も紹介しない」と言ってPさんに謝罪しました。

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