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成年後見トラブル実話/最後に…
2025.03.31 更新
トラブルを回避する自己防衛策――
成年後見のトラブルに関する統計は公表されていないので、どれくらいの割合や件数で問題があるのかは不明です。しかし、ひとたびトラブルが起きると、大変なことになることは各事例からご理解いただけたと思います。
成年後見のトラブルといえば、後見人による被後見人の財産の使い込みが一般的です。しかし、横領が発覚すれば、それは泥棒なので、警察が捕まえるのはさほど難しくありません。そして、別の人が後見人になり、お金があればお金を返すことで一件落着となります。
そのような横領に比べ、ここでご紹介した実例は明らかな犯罪という類ではなく、「それでいいのか?」という倫理的な要素が濃厚です。法律違反と言っても、善管注意義務違反や身上配慮義務違反など、民法上の不法行為にあたるものがほとんどで、家庭裁判所に相談しても対応してくれないのが現実です。ついては、成年後見制度を使う場合の生じ得るリスクを事前に回避するしか方法はないと言えるでしょう。
以下にそのための3つの策を提示します。
まずは、認知症にならないよう工夫することです。判断能力がある限り成年後見制度を適用されることは無いからです。具体的な方法は割愛しますが、認知症予防といわれる食生活、運動、心の持ちようを心がけ、日々実践するほかありません。
次は、銀行口座にお金を貯めておかないことです。家庭裁判所が本人の家族以外の人(例えば弁護士)を後見人とするのは、後見人がつく方の預貯金額が5百万円以上とか、1千万円以上の場合に限るとされています。つまり、ある程度元気なうちに現金を保険、株、不動産に付け替えておくことで預貯金額を減少させておけば、家族が後見人になる確率を高めることができるのです。家族が後見人であれば、ご紹介した事例のようなトラブルはほとんど起きないでしょう。
最後は、心あたりの人と任意後見契約を結んでおくことです。任意後見契約を通じて自分で後見人を決めている場合、家庭裁判所が後見人を決める法定後見の実施は控えるルールになっているからです。
「まだ元気だから任意後見契約等しなくても大丈夫」という人がいますが、元気なうちにしか任意後見契約ができないのもまた事実です。年齢の目安として、83歳までには任意後見契約を配偶者、お子さん、その他と結んでおくことを強くお勧めします。
任意後見契約を結ぶということは、認知症なってからの生き方とお金の使い方を考えることに他なりません。亡くなってからの財産の分け方を決める遺言がありますが、その遺言の前に任意後見があるのです。任意後見契約という形にしておくことは、後見トラブルの防止にもなるし、老いをどう生きるかを家族で考える好機になることがしばしばです。この点を是非ご家族で話し合ってみてください。有意義な時間を家族と過ごすことができると思います。