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SRコラム

成年後見トラブル実話/ガンかもしれないのに検査してくれない

2025.03.28 更新

親子が会う際に区役所と後見人が提示した異常な約束事――

成年後見制度には、後見人が付いた老親と家族の面会を制限するとか、面会する場合は一定の条件を付けるなどといったルールはありません。Mさん(30代・女性)の母親は、港区によって成年後見人をつけられています。令和7年3月、Mさんはお母さんに会うため、港区赤坂支所保健福祉係から次の内容を約束するよう求められました。

【面会時のお約束】
1)ご本人様に対して「家に帰りたいか?」など帰宅を促すような質問および「後見人やお金等財産」に対する質問は控えてください。
2)医師との面談時には、病院の治療方針や服薬について異議を伝えず、ご本人の病状や現在の状況の確認にとどめていただきます。今、ご本人がいらっしゃる場所(すなわち病院)へご家族が問い合わせをすることはお控えください。問い合わせをされた場合でも一切回答ができないとのことです。今、ご本人がいらっしゃる場所へご家族が訪問をすることもお控えください。必要な場合には警察へ連絡するとのことです。
3)本約束事については、SNSや電子掲示板への書き込み等を含めた第三者が閲覧できる媒体に無断で転載、転送することを禁止します。
4)本約束事を含めた本件についての港区の対応、後見人とのやり取り等について、新聞やネットニュースを含めたメディア媒体に対し、匿名を含めて取材の依頼や取材を受けることを禁止します。

Mさんのお母さんは、昭和15年福岡県生まれです。60歳を過ぎた頃から幻覚や幻聴が出始め、身体の痛みや喉の違和感も訴えるようになりました。心配になった一人娘のMさんは、母親を東京に呼び寄せて一緒に暮らすようになりましたが、ある日、お母さんが警察に行って「総理大臣に会わせてほしい」と言ったことをきっかけに、港区福祉課によって保護の名目で他県の遠い山奥の精神病院に入院させられたうえ、弁護士の成年後見人(以下「後見人」といいます)をつけられました。
港区と後見人は、Mさんが母親の居場所をいくら聞いても教えてくれません。「リモートで20分だけなら会わせる」と言われていましたが、Mさんが画面越しに母親の顔を見ることができたのは、それから1年後のことでした。

リモート面会のとき、画面に病院の名前が出ていたので居場所が分かり、Mさんはそこを訪ねました。すると、病院の担当者は「ここにいても治療も何もすることはない。区が身柄を預かってくれというから預かっているだけ」と言いました。それならば「母親が家に帰りたい」と言っているからと退院に向けた話し合いを持ちかけても、病院も後見人も退院させませんでした。

お母さんにはガンの疑いがあります。しかも拡がっている様子です。しかし、お母さんは病院への対抗からか、検査を拒否し続けています。「娘と一緒に居られるなら受けてもいい」と言っているのに、後見人は「なら受けなくていい」という態度を取り続け、お母さんは検査も治療も受けられないまま病状だけが進行しています。
後見人は、「年末年始だから家で一緒に過ごしたい」という親子の希望も無視。「セカンドオピニオンを受けるために外出させてほしい」と言っても無視。「そもそも、保護入院の要件を満たしていないのではないか」という専門的な問いかけには沈黙、という態度を取り続けています。

このような経緯と現状を踏まえると、港区赤坂支所保健福祉係が「面会時のお約束」と題した文章を出した理由が推察できます。
1)は、お母さんに「家に帰りたいか?」と聞いたら「帰りたい」と言うからです。「後見人が付いていることを知っているか?」とか「お母さんのお金は知らない人が管理して、そこから報酬を取られているんだよ」と言えば、お母さんが怒り出すことが目に見えているから「聞くな」と求めているのでしょう。
2)は、なぜ医師に疑問を伝えてはいけないのでしょうか? 一人娘が親のことで病院に連絡したり面会に行くと、なぜ警察を呼ばれるのでしょうか? 港区が病院に無理を言って隔離してもらっているから、区が病院に迷惑を掛けたくないと考えているのだろうと考えられます。
3)と4)で、港区はSNSに投稿するな、取材を受けるななど、勝手に「禁止事項」を挙げて、それを面会の交換条件としています。区は後見の必要がない人に後見人を付けたこと、保護入院の必要がない人を入院させたことなどが明るみになり、責任を追及されることを恐れているのでしょうか。
これらは、明かに住民の幸せより役人の自己保身を優先しているとしか見えません。

病院は「することがない」と言っているのに、お母さんはなぜ入院し続けなければならないのでしょう。後見人は、お母さんから住む場所を選ぶ自由を奪い、必要のない入院費用をお母さんは払い続けています。この後見人の行為は、そもそも成年後見制度が想定し、期待している後見人の行動とはかけ離れています。しかし、このようなことは、自治体経由で家庭裁判所から後見人の仕事をもらっている弁護士等には往々にしてあることです。そのおかげで、全国で少なからぬ人々が日々苦しめられているのもまた現実です。

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