高齢化問題が日本の極めて大きな政策課題となりつつある今、介護保険制度や成年後見制度をはじめとした、高齢者の生活を守る制度がようやく動き出しました。しかし、まだそれらの制度は円滑に機能しているとは言い難く、個人の生活レベルでの問題は山積されています。その問題を探っていくと、高齢者施策に対する知識不足が原因の一つとして浮かび上がってくるのです。近年、我国では高齢化問題に対し数々の施策が進められてきました。しかし、高齢者の生活を守るため、豊かにするために作られた制度であるにも関わらず、それを利用する高齢者自身、また周辺の人達への広報不足がこの制度の利用を妨げているのです。そこで、高齢者にとって有益な情報を提供し豊かで安心した生活へとナビゲートするシニア ライフ アドバイザー(Senior Life Adviser 略してSLA)の存在が注目されるようになってきたのです。

また、私たちは社会生活をする上で、ある一定以上の年齢層を“高齢者”と一括りにし、弱者のイメージで捉えがちですが、これは大きな誤りなのです。実際、高齢者と呼ばれるほとんどの方は元気で自立した生活を送っています。いま、高齢者層のおよそ90%を占める元気高齢者の元気さをいかに長く持続させるかの方策として、高齢者の社会参加促進が注目されています。ここで問題なのが、社会活動に参加しようという意欲があっても、大部分の方が具体的な活動に結びついていないということです。そこで、中高年者の社会参加を促したり、その意欲を活動に結び付けられるような仕組みや仕掛けを考えたり、参加しやすい場を設けることが必要だと考えられ、その役割を担った存在としてSLAが注目され、各方面から多大な期待が寄せられているのです。

SLAとは、財団法人シニア ルネサンス財団(平成4年6月 内閣総理大臣の許可を受け設立・内閣府所管)の主要事業の1つである「シニアライフアドバイザー養成講座」を修了した方に付与される資格です。この養成講座を修了し、SLAの資格を得て活躍されている方は、平成15年4月現在1,994名になります。SLAの活動は、主に、関東、関西、中部、中国、東北、九州の各地区において電話相談、シニア生き生き教室、自主研究会や勉強会、イベント開催の他、シニア商品に関する調査・研究等、幅広く自主的に行われています。

人生80年時代とは、日本人ならばおよそ誰もがかつて経験したこともない長いシニア期を歩むことを意味するのです。それは、定年退職後、あるいは子育てが終了してしまった後に、約20年以上もの人生があることなのです。すなわち、この長いシニア期をどのように生きるかによって人生の価値が決まる時代でもあり、この長いシニア期は決して「老後」ではなく、意味深い「新しいライフステージ」なのです。
この期間を健康で、経済的困難がなく、生きがいをもって生き抜くことは大変なことですが、それだけにそれを実現することは最大の幸せというものでしょう。すでにシニア期にある人は勿論、やがてシニア期に参入する人もまずシニア期を立派に過ごす気構えと自主自立の努力が何よりも必要となります。

幸いにして誰でも第一の人生で蓄積した豊富な知識や経験があります。それらをベースにし、活用し、再生〈ルネサンス〉することが第一の有力な手だてとなることは間違いありません。
しかし、人類史上初の高齢社会は誰にとっても測り知れない不安がつきまとい、危険も多すぎます。一人一人の知識や経験だけで乗り越えられるような生易しいものではないでしょう。
こうした場合、諸先輩方の話を聞いたり、同憂者と語り合ったりアドバイスを受けたりすることがとても重要になるのです。ネットワークを広げることです。そして、お互いに相談し合うことです。解決を求めて活動することです。気軽にかつ真剣に。

SLAはこのようにシニアの人々が抱える様々な不安や具体的なトラブルを取り除くために直接相談に応じ、そしてアドバイスを与える役目をするのです。現在活動中のSLAの中には自ら「生き生き教室」を主催して聴衆と共に定年後のシニア問題を探る研修会をもつ人。講演会に招かれて得意分野の講義をする人。他と語りあって啓発誌を制作する人などがあり、活動のかたちは様々です。すなわち、SLAの活動は、相談に関する質問に個別に応じ回答するだけでなく、広い意味の相談啓発を通してシニアの人々の自助自立、相互協力を促しているのです。しかも、このSLAの活動が官制のものではなく、民間の人々の発意と情熱から出発していることが注目されています。

この講座はクライアント(相談を依頼する人のこと)が持ち込む相談に適切に答え、かつアドバイスしうる基礎的知識や技能を習得していただくほか、自らの創意工夫によって社会参加活動を展開していく方法能力を身につけられるように設計してあります。趣旨に賛同し、やる気のある方々の参加をお待ちしています。