平成9年のことであるが、SLA活動の一環として痴呆(ボケ)の研究をした。定年退職後の男にボケが増加している、ということが動機のひとつであった。この研究の中で、脳の機能(右脳と左脳の働き)に、ボケとの因果関係があることが分かり興味を持った。
右脳は色彩、音色、感情などのアナログな情報を処理する感性の脳であり、コミュニケーションを深め、人生をエンジョイし、より有意義に生きるためには欠かせない働きをする。
一方の左脳は言語、計算、理論などのデジタルな情報を処理する理性の脳であり、学校の勉強や会社の仕事という領域でのコミュニケーションには必要な働きをする。一般的な傾向として女性は右脳型で、男性は左脳型ということである。

定年退職後の男性のボケの増加は、会社生活というタテ社会での生きる術は学んでも、人生をいかに楽しく、有意義に過ごすかという右脳型コミュニケーションの術を学んでいないために、目的、目標がなくなった定年後に「毎日が日曜日」となり、趣味や生きがいも特になく、楽しみといえば三度の食事とテレビ、ささやかな晩酌という、ボケのための必要条件を備えていくことにあるようだ。

右脳型の女性は、シニア期に入ると町内会、PTA、サークル活動などのヨコ社会で学習した生きる術を存分に発揮し、人生をエンジョイし、音楽や、絵画、スポーツを楽しみ、友達と親しむという感性がますます豊かになり、男性とは対照的にイキイキとしてくる。
ここに男と女のコミュニケーションギャップが生じてくるのである。

SLA活動においても同様な傾向が散見される。男性よりも女性が元気だ。男性はいままでのキャリアに囚われて、他(男と女)とのコミュニケーションがぎこちなく下手である。女性は情愛的で感情の琴線が敏感であるが、上手にコミュニケーションをしており、その右脳特有の善か悪か、好きか嫌いかという感性で、男性たちを圧倒することが多い。

― 男性たちよ自立せよ
働く術だけは学んでも、その人生をいかに楽しく、有意義に過ごすかを学ばなかった男性。しかし、それは男性の責任でもない。「働くことこそ美徳」と教えてきた日本の社会的な問題である。
男性たちよ、自己実現のために右脳を開発し、コミュニケーション能力を高め、「シニアライフをおもしろく」していこうではないか。そのために次のことを提言したい。

  1. 人や地域との係わりの中から自己を見つめ直そう。
    SLA活動は、他(男と女)との係わりの中から自己を見つめ直す出発点である。係わりの中から、他(男と女)とのものの見方、考え方の違いを発見し、自分を客観視しようではないか。そこに感謝の気持ち、謙虚な気持ちがあれば感動が産まれ、感性の右脳が磨かれていく。
  2. 地位や肩書に囚われないで、自由な気持ちで人と交流しよう。
    地位や肩書という呪縛から解き放されないと、自分の殻破りもできないし、感受性も高まらない。女性から見ると、男性の地位や肩書に囚われたタテ社会の論理や発言は、コミュニケーションを阻害する化石に等しいものである。男性の自立と右脳の開発はここに関係しているのである。
    高ぶることなく、卑下することなく、対等の立場で、あるがままに。

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