1. 公的年金の仕組み
現在の公的年金制度は、全国民共通の国民年金をベースにして、民間のサラリーマンが加入する厚生年金と公務員等が加入する共済年金が、国民年金に上乗せされるかたちで構成されています。一方、給付の面からは、年を取ったときの老齢年金、体に障害が残った場合の障害年金、一家の働き手を失った場合の遺族年金があります。いずれも稼得能力を喪失したときの保険給付ですが、以下、老齢年金に的を絞って述べます。

2. 受給資格の確認
国民年金の老齢給付である「老齢基礎年金」を受給するためには、国民年金の保険料の納付済期間と、保険料免除期間の合計が原則25年以上あることが要件となっています。受給資格期間を満たせないために年金がもらえないという場合でも、カラ期間といわれる合算対象期間を計算に入れて25年以上あればよいという規定もあります。それでも期間が不足する場合、65歳までは国民年金に任意加入する道が用意されています。さらに、昭和30年4月1日以前に生まれた人には、70歳になるまでの間、受給資格を満たすまで任意加入を続けることができるようになっています。また、厚生年金だけで20年以上とか15年以上で老齢基礎年金の受給資格が得られるという経過措置もあります(昭和31年4月1日以前に生まれた人)。いずれにしても、受給資格があるかどうかを確認することが先決です。「老齢厚生年金」は、「老齢基礎年金」の受給資格がある人で、1ヵ月以上厚生年金に加入していた人が受給できます。

3. 支給開始年齢と年金の額
「老齢基礎年金」は原則として65歳から支給されます。年金の額は、昭和36年4月から60歳になるまで国民年金の保険料を納めた場合(満額)で、80万4,200円(平成11年度価格)です。月額になおすと約6万7千円です。夫婦二人とも満額受けられるとして、二人合わせて約13万4千円となります。実際には、加入期間の関係で、平均的にはこれより低い額になっています。
「老齢厚生年金」は、「老齢基礎年金」に上乗せされるかたちで65歳から支給されるのが原則ですが、厚生年金の加入期間が1年以上ある場合には、特別に60歳から支給されることになっています。これを、「特別支給の老齢厚生年金」と呼びます。ただし、昭和16年4月2日以降に生まれた男性から、支給開始年齢を段階的に65歳まで引き上げていくことが決まっています。この場合、60歳から何も支給されないわけではなく、報酬比例部分相当の年金額(部分年金)だけは支給されることになります。年金の額は、受給者の平均標準報酬月額に依存しますので何ともいえませんが、平均標準報酬月額を仮に35万円とすると、総額で月額20万円程度、部分年金は月額10万円程度となります。(配偶者に対する加給年金額も含んでいます。)

4. 自助努力の必要性
自営業者等の場合は、65歳に達するまでは原則として年金はありません。しかも、65歳からの年金額も十分とはいえないでしょう。民間のサラリーマンの場合は、60歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえますが、生年月日によっては、部分年金しかもらえない期間があります。年金額の不足を補う手段として、自営業者等の第1号被保険者のために、国民年金基金という国民年金の上乗せ制度があり、民間のサラリーマンには、厚生年金基金や税制適格年金などの、いわゆる企業年金制度が用意されている場合もあります。最終的には、各人のライフプランに照らして、さらに老後資金の上積みが必要と考える場合には、自助努力として、民間の個人年金保険に加入するなど、早い段階から老後資金対策を考えておく必要があります。


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