1. 相続税のあらまし
相続税は、相続や遺贈によって被相続人(亡くなった人)から財産を譲り受けたときにかかる税金です。
次に掲げる算式で求めた正味の遺産額が基準控除額{5千万円+法定相続人の数×1千万円}を超える場合に相続税がかかります。

◆正味の遺産額=被相続人の財産+みなし相続財産−債務や葬式費用
(1) 相続財産には墓地や仏壇などの非課税財産は含まれません。
(2) 被相続人からその死亡前3年以内に贈与を受けている財産があるときは、原則として正味の遺産額に財産の価額を加えます。
(3) みなし相続財産は死亡保険や死亡退職金など相続税法に定められているものです。

各人の相続税額は、上記の正味の遺産額から基礎控除額を控除して得た金額(課税遺産総額)を各人が法定相続分どおり相続したものとして計算した相続税の総額を、各人の実際の財産取得割合によって配分して計算します。
さらに、実際に納める税額は、各相続人の事情によって「税額加算」(相続人が配偶者及び1親等血族以外の場合、20%の税額加算)や、「税額の控除・軽減」(未成年者控除や配偶者の税額軽減など)をして算出します。

2. 相続税対策
上記の算式で相続税がかかりますが、次にその対策を考えてみましょう。対策は、相続の発生前にたてるのが原則です。相続税対策には、納税資金対策と節税対策があります。ここでは、対策の着眼点を掲げます。財産の状況に適応する組み合わせで効果的な対策を講じて下さい。

A. 納税資金対策
相続税を期限内に納付できるよう納税資金を準備する対策が必要です。相続財産が不動産中心で金融資産が少額の場合は、不動産の売却等によって金融資産に組替える対策が重要です。
B. 節税対策
 
a) 相続財産の評価額を引き下げる対策を講じます。例えば、相続財産の評価額と時価に差のある貸地や貸家建付地などの不動産を利用したり、生命保険契約等を活用することで評価額を引き下げます。その他、財産の種類や利用状況等に応じて、節税を図る具体策を検討していきます。
b) 相続財産そのものを減らす対策を講じます。贈与税の特例がある居住用財産の配偶者等への贈与や、子、孫などへの住宅資金の贈与については税額が軽減されます。その他、贈与税と相続税を合算した最終的な税負担額が、贈与をしない場合に支払う相続税額より少ない間(贈与分岐点まで)の贈与は、有効な節税対策となります。遺産総額に応じて、具体策を検討します。
c) 非課税規定を活用した節税対策を講じます。生命保険金や死亡退職金などに適用される非課税枠を最大限に活用します。また、仏壇、墓地等、非課税とされているものは、被相続人の生存中に購入しておきます。
d) その他、養子縁組による法定相続人の増加や、配偶者に対する税額軽減の規定を活用し節税を図ります。(配偶者が法定相続分までの財産を取得した場合には相続税はかかりません。その法定相続分が1億6千万円に満たないときは、1億6千万円まで財産を取得しても相続税はかかりません。ただし、原則として申告期限内に遺産を分割して申告することが必要です。)また、小規模宅地等の評価減の特例を最大限に活用して評価額の引き下げによる節税を図ります。


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